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Sometime Butterfly(完結)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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『望月は人の願いを叶えるというそうだよ』

だから私たちも願おう。

月が満ちるたびに。

此度こそ、広い世に結ばれ、そして添い遂げようと。

褥の睦言にお前が言った。





甲冑を纏い、その美しい唇から一筋、紅を引いたような血を流しながら、俺の腕の中でお前は言う。

『今宵は望月だ……』

だから願いながら逝こう、と。

お前の最期の吐息を聞いたその時、俺の背に熱い一撃が穿たれた。

お前の身体に折り重なるように崩れ落ちながら俺は、そこに、二頭の蝶を見た。

この混乱の最中、この荒さんだ原野にどこから紛れてきたのか。

それは異世界へと俺たちを誘うようにひらりと舞う。

そうだ。

ならばこの蝶にこの想いを託そう。

今宵は望月。

その願いを背負い、時空を越えて、再び俺たちが巡り会えるように。

この記憶が、二人の記憶からなくなってしまったとしても。

結ばれ一つになる日が来るように。

この身が朽ちてもただ、その日を待ち望む。

見上げる空。

その眩い光に向かって、二頭の蝶はどこまでも高く、舞ってゆく。

美しい記憶をこの身に刻んで。



「よう七月、久々じゃん」

 七月の馴染みのバーで。人待ち顔でマティーニを舐めていた七月に一人の男が声をかけた。

「久しぶり。元気してた?」

 柔らかな笑みとともに挨拶を返す七月に見入りながら、男は七月の隣に腰を下ろした。

『で、七月。色校』
「ごめん望木、出来は望木的にどうだった?」
『うん? いい感じにできてんじゃね? 色の出方もいいし』
「じゃあ悪いけど、そのまま通してもいいかな。大井さんのOKもらって先方からもOKもらって……今回だけ、だから」

 望木はほんの一瞬驚いたように黙ったが、いつも仕事に真摯な七月の滅多にない頼み事だからか、微かに笑ってわぁったよ、と答えた。

 誰? と問うと、七斗はさぁ、と小さく首を傾げる。七月は差し出されたそれを戸惑いながらも受け取り、電話を耳にあてがった。

「――はい」
『あ、七月?』

 何事にも物怖じせず、けれども人に決して高飛車な印象を抱かせることはない、はっきりとした声。聞き慣れたその声の主は、望木だった。

 ――知ってた。

 二人の想いが重なることなんて、有り得ないと思っていたのに。

 七斗にとっても、七月と通じ合えるかどうかは賭けのような奇跡だったはずなのに。

 その矛盾にも見える七斗の答えが、けれども七月には理解できた。

 きっとそれは、いつか必ず、結ばれ一緒になろうと交わした、劫初からの約束。

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