2ntブログ

2007年08月

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「痛ってて……」

  雄大はあちこちが痛い感覚で目が覚めた。意識がはっきりしていくにつれ、その痛みは頭痛と下半身の痛みだと判ってくる。頭痛は二日酔い。下半身は……。


「せんせ」
「?」
「今、彼氏、いる?」

 そう聞かれて、賑わう居酒屋の雑音が凍りつき、要の耳には届かなくなった。代わりに自分の心臓の音がばくばく聞こえる。酒の所為か、心臓は爆発しそうに脈打っていた。
 引越し屋か。似合ってるだろうな。要は、ビールのジョッキを持つ直登の腕を眺めてそう思った。骨太で、美しく引き締まった筋肉がついた逞しい腕。どちらかというと華奢で体力もあまり無く、学生時代のアルバイトと言えば、家庭教師くらいしかできなかった要とは随分違う。
 三十分程、と言ったが結局仕事が片付くのに小一時間掛かってしまった。もう帰ってしまっただろうか、などと思いながら階下の喫茶店を覗くと、そこには店のスポーツ新聞を読みながら座っている直登の姿があった。

「吉塚ク~ン、お客さんよ」

 定時はとっくに過ぎた午後七時。しかし吉塚要の勤務する某コンピュータ販売会社では、社員は一向に帰る様子もなく、むしろパーテーション一つ隔てた隣の営業セクションでは外出から戻った営業マンたちが、今から仕事とばかりに昼間より活気づいている。

「客? 俺に?」

「……俺、まだちゃんと言ってなかったよな」

 篤が飲み干したビールの缶をくしゃりと握りつぶした。

「涼、好きだよ」

 篤が初めて涼を名前で呼んだ。


「この部屋最後の夜に、かんぱーいっ」

 篤は、んぐんぐっと一息で手にしていたビールを飲み干した。

「……早いな」
「そう? 今日は俺の奢りなんだから、作長も遠慮なく飲めよ」
「兄ちゃん、今日はかなかな捕りに行く約束した日だよっ」

 伸一(ノブイチ)が学校より戻ったと同時にハルが駆け寄って来た。

「そうだったね。用意は出来てるかい?」

 伸一がそう訊ねるのも聞かず、ハルは元気よく表に飛び出した。

「早く早くっ!」

 虫かごを肩に掛け、網を手に伸一を手招きする。
 翌日、家族で祖父の墓参りに出掛けた。普通に歩けば十分くらいの道のりを、祖母と歩く為その倍の時間を掛ける。時折吹き抜ける爽やかな風が、じっとりと滲み出る汗を拭い取ってくれる。

 墓は、ほぼ毎日ここを訪れる祖母の手により美しく手入れがされていた。可愛らしい野の花も供えられている。いつもは祖母が行っている作業だが、今日は僕が墓を洗い清めることになった。僕は墓標に水を遣り、手を掛けた。代々の僕の祖先の名前。知っているのは、祖父の「伸治」という名前だけ。僕の名前は、僕の誕生を心待ちにしていた祖父の名前を取って、「伸春」とつけられた。漢字が違うのは、僕が春生まれだからだ。

 僕は「伸治」の横に並ぶ、「伸一」という名前に初めて気付き、手を止めた。
「やぁーっと来たでぇ! うみ~~!!」

 良充はぱぱぱっとTシャツと短パンを脱ぎ捨てた。中に水着を着ていた良充は、あっという間に泳げる態勢になった。

 中三の二人は、塾の夏期講習のため、夏休みに入っても、今まで海には来ることができなかった。やっと終わった夏期講習。懐かしい海の匂いに開放感もひとしおだ。
 学の望遠鏡は本当にあの時と同じ物なのだろうか。そう思ってしまうくらいに小さい。ここまで運ぶの、結構大変だったのに。今はおもちゃのように軽々とそれを学は持ち運んでいる。

「じゃぁ、始めようか」

 実家を出て、少し離れた大学へ進学した僕は、夏休みで帰郷していた時に、町で偶然学(がく)に再会した。

「今はほうき星、来てないけど、今夜もう一度、観に行ってみないか。あの丘に」

再会を祝して軽く飲みに行った店で、学が僕にそう言った。

「いいね」

 僕は笑って小さく頷いた。

「あの、部長……?」

 きゅいんと音を立て立ち上がるパソコンの静かな唸り声にすらかき消されそうな程小さな声で、村椿が遠慮がちに言った。

「休み明けたら、僕に、号外でなく、正式広報の一欄を、書かせてもらえませんか……?」


 人気のない校舎。ジワジワと鳴く蝉の声と、カキーン、と定期的に鳴る野球部のノックの音が遠くから聞こえてくる。

 三垣は一人、新聞部の部室にあるパソコン前の椅子にぼんやり腰掛けていた。夏休みに入ったのに、特に何の用も無くても部室に顔を出してしまう自分を忌々しく思い、誰もいないなら一服でもするか、と胸に忍ばせた煙草に手をかけた。その時、がちゃりと部室の扉が開く音がして、三垣はその手を止めた。

「これ、本当にお前が書いたのか?」

 差し出されたレポート用紙に目を通した三垣は目を丸くした。

 生徒会長の恋の行方。彼の想い人が二つも年下のダークホースにかっさらわれた様子をすっぱ抜いた大スクープ記事だった。

 毎年この日は必ず予定を空けておく。

 早めに夕食を済ませて啓輔の家へやってきた良充は、「おばちゃんこんばんは~、啓輔部屋やんな~」と玄関に迎えに出た啓輔の母親に挨拶し、通い慣れた啓輔の部屋へと続く階段を上った。
「あの、三垣部長……」

 村椿が目元を潤ませて三垣の横に立っている。

「あんだ?」

 三垣は『俺は怒ってるんだオーラ』を精一杯出して村椿の方を向いた。

「あの、迷惑かけて、本当に、すみません。僕、でも、三垣部長のような記事、書けるようになりたいんです。だから、頑張りますから……」

 ここまで言ってとうとう村椿の目から一筋の涙がこぼれた。

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 どうしてこんなにトロ臭い奴が入部してきたんだ、と三垣はやっぱり思う。コピーを取りに行かせれば、必要部数の倍の失敗コピーを携えて半泣きで戻ってくる。スクープ狙いの尾行では、気付いたら姿を消し、どこへ行ったかと辺りを探せばカツ上げされている。まったくそんな要領の悪さでは、この伝統ある新聞部の次世代を担っていけない。

「新入部員にコピー代だけで生徒会に随分貢献してくれている子がいるみたいだね」

 先日インタビューで面会した生徒会長に嫌味を言われる始末。経費のことを考えると頭が痛い。


「享一、前よりヒゲ濃くなってねぇ?」
「……かもな」

 享一は、自分の顎を一撫でしてから、その顎を泰司の頬に擦り付けた。

「いったいって! そんなオヤジ臭いことやめろって!」
「……だれがオヤジだよ」

 享一が小さく眉をひそめてぴた、と動きを止める。むすっと不機嫌そうに泰司から身体を離した。

「起きろ」

 脳髄に響く声が覚醒を促す。けれども睡魔がそれを阻もうと抵抗してくる。

「……ん、いやだ……」

 身体を揺すられ、泰司の脳の一部が無理矢理起こされる。でもまだ目を開ける指令を出す部分は眠っているらしい。瞼が重くて動かない。

「おーい啓輔ぇ、コッチコッチ~」

 電話で「一緒にスイカ食お~」と呼び出されて玄関前に立った啓輔の気配をいち早く察知して良充が呼び寄せる。 啓輔が声のする庭の方を覗き込むとランニングに短パンという典型的な格好の良充が縁側に座って元気に手を振っていた。

「がああぁっ! もうっ! 何でっ!」
「何でっ、て?」

 煙を吐きながら享一が溜息混じりに訊く。

「Whyだよっ! ちきしょ~っ」
「駐禁だろ」

 享一はあっさりそう答え、ショックでふらつく泰司の肩を抱えて部屋へと連れ戻った。
 呆然と座り込む泰司に水を飲ませる。泰司はんぐんぐっと一気にコップを空けて虚ろな目で享一を見た。

「享一……」

 今にも泣き出しそうな泰司の姿に享一は苦笑いを浮かべる。

「明日、俺が取りに行ってやるから」
「うん……」

 享一は泰司の頭をくしゃりと撫でた。




 仕事から戻った享一は、自宅アパートのドアに鍵を差し込んだ。ドアの鍵がかちゃり、と鳴る。

「……?」

 確かに今、シリンダーの中が回る音がしたはずなのに、ドアが開かない。不審に思い、もう一度鍵を差し込み、かちゃりと鳴らす。
 開いた。……という事は、今まで鍵が開いていた? 朝、閉め忘れて出たか、それとも空き巣に入られたか……。
 部屋の中はいつも享一が仕事から戻った時と同様、真っ暗。享一は慣れた手つきで部屋の明かりを点けた。

……やっぱり。

 ざーん。

 車のエンジンを止めて初めて自分達がどこにいるか判った。

「ちっきしょー、お前、クソナビ。わざとだろ」

「俺にナビ頼んだんだから、俺の行きたい所に行かせろっての」

 夜中の一時、寝入り端の享一の元に、念願の運転免許とマイカーを同時に手に入れたと、まだたどたどしい運転で泰司が突然やって来た。中古だがスポーツタイプのその車は、前の所有者がかなりのこだわり派だったらしく、足まわりにかなり手が加えられ、一見したところ、初心者が乗っているとは到底思えない。そんな車にとても似つかわしくない、葉っぱのマーク。
「なあ~、啓輔ぇ、席代わってえや~」
「……いやじゃ」
「ケチぃ~」

 二学期入って最初の席替え。良充はまん真ん中の一番前の席を引き当てた。ちなみに啓輔は良充の隣の列の前から三番目。

「こら、枦(はぜ)~、いっぺん決まったモンは変更きかんぞ~」

 啓輔に座席のスイッチを頼み込む良充の声を聞きつけて、担任の山中がすかさず釘をさした。

 ゆらゆら、ゆらゆら。ちりん。

 風鈴ってのは案外鳴らないものなんだな。短冊部分はさっきからずっと小さく揺れているのに、音を鳴らすのは、ごくたまにだけなんだあ。

前の住人が残していった風鈴をただぼんやり眺めて、涼はぼうっとそんな事を考えていた。クーラーのないこの部屋は、風鈴の効果もなく、うだるように暑い。さっき風呂に入ったばかりなのに、もう体が汗でねっとりしてきてしまった。煙草を吸って血流を鈍くしてみても、暑いものは、やっぱり暑い。何となくスイッチの入っているテレビの野球のナイター中継も、ずいぶんと遠くに聞こえる。

――どんどん。

「お~い、作長、いるんだろお、シェルの散歩、一緒に行こうぜ」
 同じ大学の篤が玄関の扉を叩く音がする。涼は仕方なくのそりと起き出して、玄関の鍵を開けた。

「……どや? ええやろ? …ん?」

 航平が司の耳元で囁くように訊いた。

「……そんな下衆い言い方されたら、いいものもいいと言いたくなくなるだろ」

 司は肩に腕を回そうと近づく航平のみぞおちに肘鉄を喰らわせた。

「痛てて……。そんなん言うたって、お前がちっともこういう台詞を使うような状況に持っていかせてくれへんからやん。もっと実践でこんな台詞、使わせろや」

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