2ntブログ

2009年05月

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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すいませんまだまだ続いてます『キャラ対話バトン』
前回はコチラ→『キャラ対話バトン』(1)


お付き合いいただける方は↓へドゾー。
前回に増して長いですスイマセン(;´Д`)





ウチからリンクも貼らせていただいてます『BL風味のさくらんぼ』の柚子季さんからバトンを回していただきますた(*´∀`)

まだ書いてる途中なんですが長くなりそうなので
何回かに分けてうぷらせていただこうと思いますw

恥ずかしながらワタクシが前へ出張らせていただいとります。
ご興味あるかたは↓へドゾー。






※15禁でおながいします。






「違……」
「じゃあなんだよ位織さんっ」
「っ、……」

 気付いたら、尚大の腕の中だった。

 激した力。

 位織の心まで踏み込んで、抱き締めるかのように。

 じゃな、と二人に背を向けたまま片手を軽く上げて、梁瀬は一人、駅の方へと歩いていった。

「――位織さん」

 梁瀬の背をじっと見送る位織に、尚大が声を掛けた。

「ここから俺んちと位織さんち、どっちが近いの」
「――え?」
「話。早くしたい」
「……、尚大の部屋」

 実のところ位織の部屋の方が近い。けれどもまだ、新しく始めるつもりで借りた部屋を、尚大の名残りで満たしたくはなかった。







 すぐ後ろにまで近付いたエンジン音に気おされたかのように、二人は歩みを止めた。まさか、と位織はゆっくりと振り返った。

 確かにそれは、尚大の車だった。

「尚大……」

 小さく名を呟くとまた、動けなくなる。

「位織さんっ」

 バン、とドアを叩きつけるように閉じて、尚大が位織の元に駆け寄ってきた。

 あるいは互いに重い付き合いを好まないと、最初に告白し合ってしまったこと。

 最初に交わした暗黙の取り決めに、二人共が縛られ過ぎて来たのかもしれない。

 いずれにしても、二人が恋人同士のような関係になるには、割り切った関係である期間が長過ぎた。

「これでケリ、付いたのかな、……」

 一度ゆっくり瞬きして、位織は笑った。確かに笑ったのに、歯が噛み合わずに震えた。







 ――尚大。

 もし少しでも、悔やんでいるのなら。

 欲しいのは、ただ一言。

 ――俺が、必要だと……。

 「愛してる」じゃなくていい。

 「好き」じゃなくていい。

 その一言さえあれば。

 小さく唇を開く。なのに長年心の奥に押し込んでいた想いは、かたくなに空気に乗せられることを拒み、位織の中から出てこようとしない。

 思えば今まで一度も、尚大を好きだと、誰かに打ち明けたことがない。一人でいる時でさえ、それを言葉にしたことはなかった。

 今急にそれを声にすることなんて、できるはずもない。

「位織さん、どうしてそんな事っ……、俺に言ってくれれば、一緒に手立てだって考えられたかも知んねぇのに……っ」

 いつも穏やかな尚大の声が、強い語気で位織に浴びせ掛けられる。

 自分の卒業の裏で、そんな取り引きが存在した事に憤るかのように。

 それを打ち明けなかった位織を責めるかのように。

 研究所の建物を出ると、僅かな外灯のみに照らされた薄暗い前庭が眼前に広がる。ロータリー状に舗装された車道の横に平行する歩道を歩き、正門の側まで行くとそこに小箱のような建物があり、その中では二十四時間体制で守衛が待機する。機密を扱うからか、敷地への侵入者に対してのチェックは厳しい。

 位織はそこに座る守衛にお疲れ様です、と声を掛けてから、閉じた門の横に取り付けられた通用口を抜けて外に出た。

 ――尚大は、どうしているのだろう。

 最後に会った時言っていたように、尚大は彼自身の恋を終わりにすることができたのだろうか。

 もしそうなら。

 きっと尚大は苦しんでいる。

 長年想い続けてきた恋を終わらせる痛みを今、位織も同じく味わっている。だから分かる。

 今こそ尚大は、彼自身を癒してくれる誰かの腕を一番必要としているに違いない。

「ん……趣味みたいなものだしね。色々数値変えて試してみてんだけど……なかなか思ったような結果が返ってこないんだよね」

 位織が苦笑と共に肩を竦めてみせる。

「そか。そんならいいけど、竹内ちょっと無理してねぇ? つかちょっと痩せた? ちゃんと飯食ってんのかよ」
「食べてるよ。今日も昼一緒に食ったろ?」
「そうなんだけど……竹内が静かなのは元々だけど、最近元気ねぇよな気がしてさ。……俺の言ったことで悩んだりさせてんじゃねぇかとかも、ちょっと思ったりな」

 心配そうに位織を見る梁瀬に、位織は慌てたように首を横に振った。


「それだけですか」
「――はい」

 友永がゆっくりと、絶望したような溜め息を吐いた。押し寄せる絶望の波と葛藤するようにしばらくじっと目を閉じ、そして眉を寄せて目を開けた。


「――で。要件は、なんですか」

 穏やかに始まった会話から一転、友永が尚大を見据えた。長年培った、鋭い観察眼で。尚大も憶することなく、友永のその目を見返した。

「すいません教授、誰に聞けばいいのか――教授ならご存じじゃないかと思いまして。位織さんの――竹内位織さんの連絡先を、ご存じないでしょうか」

 友永の片眉が、ぴくりと動いた。尚大を見つめる視線に、鋭さが増す。



「――ごめん、梁瀬……」

 己の身勝手さに、打ちのめされる。

 梁瀬は、自分とは違う。

 想いが届かなくても、どんな形でも良い、身体を繋ぐことができればと、自分の本心を騙しながら尚大とただ身体だけを重ねてきた自分とは。

 けれども。

 そうしてでも想う相手が欲しいと思う、そんな気持ちもあるということを。

 梁瀬は理解るだろうか。

 じっと、立ちすくんで梁瀬を見た。

「あースゲェ飲んだ。ほら見ろよ竹内、俺まっすぐ歩いてる?」

 二軒目の店を出て、梁瀬がおどけたように両腕を横に伸ばして歩いてみせる。そのよろよろとした足取りに、位織は笑って首を横に振った。

「歩けてねぇって。大丈夫かよ。ちゃんと帰れんの?」
「んーどうかなぁ。明日遅刻したら察してくれよ」

 笑って覚束なく歩く千鳥足に、位織はそっと手を貸した。

「――今ちょっと、ケリを付けたいことがあって……それにケリが付いたら、返事するよ。だから」

 少し時間が欲しい、と俯いた。

「即答で断られると思ってたから、待つぐらいなんてことねぇよ。いつまででも――できることなら良い返事、待ってる」

 微かに見え隠れしていた不安がその表情から消え、梁瀬が笑って答えた。位織もその笑みに誘われるように顔を上げ、表情を緩めた。

 もし、最後のひとひらまで散ったなら。

 この身を梁瀬に預けよう。

 それまであと少し。

「……梁瀬は、ゲイなの?」
「んー……そういう括りで言うなら、バイなのかな。今まであんま性別にこだわって人を好きになったことねんだよな。つっても男との経験はないんだけど」

 梁瀬が小さく肩を竦める。

「女の子でもいいなら、なにも好き好んで男なんか……やめた方がいいって」

 携帯電話の番号を変えた。

 この土日で、新しく住む部屋を探した。次の土曜、そこに引越す。

 尚大には、告げずに。

 ある日そこに当然咲いていると思っていた桜が、静かに散ろうとしていたなら。

 尚大はそれに気付くだろうか。

 惜しんでくれるだろうか。




「そろそろ俺も独りよがりのお守り役は、終わりかもな……。結局俺は、あそこまでバカにはなりきれねぇし」

 どこか一点を見つめ、尚大が一人話し続ける。その視線の先にいつもあるもの。そこに今、もう一人の人物が寄り添うようになった。

「ナツメが誰とヤっても、何回浮気しても、それでもナツメん事責めねんだよ。それどころか俺といたなら安心だとか……なんつかマジでスゲェバカなんだよ。ナツメもそれに結局ほだされてやがんの」

※途中ちょっとアリですw




 入れ替えた数値を順に結果に導いてゆくコンピューターの静かな動作音だけが響く部屋で、位織は一人じっと見るでもなくモニターを眺めた。

 ――あんま無理すんなよ。

 梁瀬が去り際言った言葉がいつまでも位織の中に残る。

 自分の想いを相手に告げずに、自分の内に秘め続けることは。

 本当は想いを寄せる相手と、割り切った関係を貫くことは。

 一人静かに流した涙を、なかったものにしてしまうことは。

 無理をしている、と言うのだろうか。

「してねぇよ、無理なんて……」

 ぽつり。小さく呟いた声は、コンピューターの動作音にかき消された。

 鷹揚で明るい梁瀬の論理はいつも大胆で位織にとって興味深く、自ら展開した論を確かめるためなら徹夜も辞さない梁瀬の研究に対する姿勢は、彼の芯の強さを思わせた。

「ここんとこ毎晩じゃね? 行き詰まってんの?」
「そういう訳じゃねぇよ」

 緩く笑って、梁瀬を見た。

 友永は、位織が再び顔を上げることができるまでずっと、黙ったまま隣に座っていた。

「この先もし困ったことがあれば、いつでも相談して下さい。私ならきっと力になれると思いますから」

 ようやく顔を上げた位織に、友永はごく穏やかな表情で位織にそう言葉を掛けた。友永の申し出に、それはできない、と思いながら、それでも位織はありがとうございます、と礼を言った。位織が困った時に、友永が持つ権力を使うことさえも厭わないという友永の想いは、素直に嬉しかった。

 持っていた傘はほとんど意味を成さなかった。それでも教科書類の入った鞄の中身だけは死守してなんとか家に帰り着いた。時間的に慎治が家に帰る時刻の前だったことにほっとして、歩はそのままシャワーを浴びることにした。

 雨に濡れて冷えていた身体をシャワーの湯で温めて、生き返った心地で風呂場から出る。タオルで身体を拭きながら冷蔵庫にある麦茶を探していたら、玄関のドアの鍵が外から開いた。

「あれ、慎治さん」
「ただいま。店、雨で一時間早く閉めることになったから」

 歩が聞くまでもなく、慎治が歩の疑問に答える。そか、と穏やかに笑みながら、慎治の背広の濡れた肩を、持っていたタオルで拭った。


「お前、帰れねんじゃね?」
「んー……」

「俺んち泊まってく? 今日はバイトもねんだろ?」
「うん、……」

 野本の住む学生マンションは、二人が通う大学の学生をターゲットにした、歩いて五分程で大学に通える近場にある。今までも急な休講などで時間を持て余した時に、何度か歩も訪れたことがある。

 電車も止まり、明日も二限から講義がある。加えて今夜はバイトがない。

 晴れていたなら野本の言葉に甘えたかも知れない。

 でも今日は。雨が降ってるから。

「もしかして、俺んとこ泊まったら誤解されたり……?」

 ふと思い至ったらしい野本が、歩を伺うように覗き込んだ。思いも寄らなかった野本の言葉が少しおかしくて、歩はその視線に応えて一度、ごく小さく噴き出すように笑った。

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