2ntブログ

2009年08月

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 ――知ってた。

 二人の想いが重なることなんて、有り得ないと思っていたのに。

 七斗にとっても、七月と通じ合えるかどうかは賭けのような奇跡だったはずなのに。

 その矛盾にも見える七斗の答えが、けれども七月には理解できた。

 きっとそれは、いつか必ず、結ばれ一緒になろうと交わした、劫初からの約束。

「――ごめん慎治さん」
「ん?」
「慎治さんも、ハダカ」

 着せらんなくて、とまた少し申し訳なさそうにしゅんとなりながらも、さり気に慎治に掛けられたバスタオルをめくってその中を覗く歩に、慎治はまた笑った。

 手の甲から七月の手を包み込む、七斗の手のひらの熱。冷たかった七斗の手のひらが、七月に触れて少しずつ温かさを取り戻してゆくのが分かる。

 今リアルに、七斗と熱を分け合っていると実感する。身体の芯から蕩けてしまいそうな程に、恍惚とする。

 一度に触れてしまうと押し寄せる波に飲み込まれてしまいそうで、徐々に、少しずつ、七斗に触れてゆく。七月を満たすその熱を大切に、確かめるように。

 そうしてようやく、手のひら全てが七斗に触れた。

 七斗の頬骨を親指でそっと辿ると、七斗はゆっくり瞬きし、コクリと喉を鳴らした。流れ込む熱の波が、七月の身体の中で大きなうねりとなって全身に染み渡ってゆく。

 それが叶わなくとも、七斗がつけた傷ならば。

「――言ったろ、俺なら大丈夫って」
「痛くても俺、謝んねぇよ」
「いいよ、謝らなくても」

 謝らなくていい。

 謝らなくてもいいから。

 ――どうか。

 『願い』を叶えて。

「二匹よく似て見えたから、ね。もしかしてって、思ったんだけど……」

 しまった、と思った時にはもう遅かった。七斗は罠に掛かった七月に満足するように、にやりと口端を上げた。

「あれはつがいだよ。メスの方が2枚目の羽に黒い模様が少し入ってんの」

 奥へ進もうとすると、夕べと同じように、うなじ辺りに鼻先を寄せてきた七斗に、再びそこをくん、と嗅がれた。

「今日は余所で風呂入ってきてねんだ?」
「こんな時間から……ないよ」

 騒ぎそうになる皮膚の下、それを自ら宥めるようにそっと息を吐きながら、ごく穏やかに笑ってみせた。

 帰り道、二人は終始無言だった。揺れる電車の中、七月はドア横の手すりを握って立ち、七斗は七月から僅かに距離を取って、つり革にぶら下がるように両手を掛けていた。

 まるで他人のような距離。

「――えっと俺、帰るね。七斗が今ここにいるってことは部屋、鍵空いてるんだろ?」
「……、七月」
「お前もほら、事務所、戻んないと」

 七月を追い詰めるような沈黙に耐えきれず、七月はその場から逃げるように視線を出口へと向けた。

 逃げるのか、とさらに七月を問いただすような七斗の声には気付かない振りをして、ああそうだ、とポケットを探った。

 ぐったりと脱力した慎治を支えるように抱き締め、歩は自分の頭から血の気が引いて行くのを感じた。

 どうしよう、と呟いて視線を彷徨わせる。その視線が行き着いた先、部屋を一瞥して歩は慎治を抱き抱えた。

「とりあえず、横に……」

 立ち上がり、湯から出た。慎治を抱えたまま裸足で飛び石を渡り、湯が滴るのも忘れて室内に戻った。

 着ているシャツの柄が異なる以外、昨日とほとんど変わるところのない軽装に身を包んだ七斗は、ここまで走って来たのだろうか、息を切らせて肩で呼吸をしている。ただ、目は大きく開かれ、七月をじっと見据えていた。

「七斗……どうしてここに」

 わななく唇。七月も立ち竦み、動揺で荒くなる呼吸に肩が大きく上下する。

 写真とタイトルをただ食い入るように見詰め、七月は動けなくなった。

 尾を付け合う行為が何を意味するのかは、昆虫の生態に詳しくない七月にも大体は想像がつく。

 ただそこに卑猥な雰囲気は全くない。むしろ神々しささえ感じさせるその二頭は、燦々と降り注ぐ太陽の下、愛を確かめ合う。

 瓜二つとも言える二頭はつがいなのだろうか、けれども雄雌は素人目には判別つかない。あるいは、――。

 やはり昆虫写真と言うより芸術写真を主軸に据えて、七斗はカメラを構えているようだ。

 被写体の蝶は自然の中だけでなく、街の一角にいるものを写し撮っているものも多く、それらのタイトルにはその刹那を切り取ったような、儚さを含んだどこか切なく、なのに僅かに甘美さを感じさせるようなものばかりだった。

 ギャラリーは大通りを一筋中に入った、とある画材屋の二階にあった。細い階段を上ると、目の前に開けた白い空間が広がる。

 そこに七斗の姿はなかった。

 時間的なものなのか、そもそもいつもそうなのか、見に来ている客は七月の他にあと二人だけで、新聞記事を見て知ったのか、写真とは縁遠い雰囲気の、仕事帰りのOLらしき女性が、写真を眺めては二人小声で何かを言い合っている。

 入ってすぐのテーブルに一人、受付の女性が座っていた。

於:皓市の部屋w



「智裕」

「…………」 

「智クーン」

「…………」

「顔見せろって」

「…………」

「智裕、スゲェ可愛いかった」

「……可愛いとか、言うな」

「じゃ言わねぇから」

「パンツ、寄越せ」

「えーもう? もうちょっとこのままでいようぜ智裕ぉ」

「0時、過ぎた?」

「? うん」

「じゃあ誕生日は終わりだ。パンツ寄越せ」

「こういうのはせめて明日の朝まで有効だろ今晩くらいこのまま一緒に寝ようぜ智裕ぉ」

「てかそもそも誕生日にこんなこととか、ベタ過ぎたあーもー……」

「智裕」

「……、……なんだよ」

「スゲェ好き」

「……知ってる」

「ありがと、智裕」

「ちょ、当たってるってぇの」

「もっかいしよ?」

「ヤだよお前全然俺のこと考えてないだろ」

「じゃ次はいつだよ」

「……、……の」

「え?」

「俺の誕生日、とか」

「そりゃねぇよ智裕それ四月じゃねぇかよそんなに待てねぇって」

「うるさい次があるだけいいだろっ、っ、んっ」

「……やっと顔見れた」

「…………(かば)」

「あっ、智裕、だから顔隠すなって。好きだよ智裕、智クーン」

(延々続)




この一週間前の二人w
『触れたところから伝わる君の体温』

皓市×智裕
『君と濡れたい10のお題』


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約束は果たされたモヨンでし(*´∀`)
本文中には使いませんが智クンは終始///////なカンジでw




「あー全然分かんね。智裕、ノート見せろよ」
「分かんないならヒントは教えてやるって約束だろ」

 智裕はスゲなく答え、そっと伸ばされた皓市の手をぺし、と叩いた。

 智裕の部屋。ふたりで机を挟んで夏休みの宿題をしている。

 クーラーの効いた部屋。触れた智裕の指先は冷たい。

「ああ、やっぱ兄弟だったんだ。この歳で個展開いてるっつたらかなり将来有望じゃねぇかよ」
「ん……なのかな」

 そんな有望株なら出版社からも引っ張りだこかも知れない。

 けれども七斗の写真を、自分がデザインして形にしてみたくなった。

 七斗が良いと、言ってくれるなら。

 七月はパソコンの電源を落とし、立ち上がった。

 そこへ見計らったようなタイミングで、望木が欠伸をしながら仮眠室から出てきた。

「あー七月お疲れ。入稿済んだ?」
「ん、今終わった。いつもお前に代わって俺が謝ってんだよ。この貸し、結構たまってるからね」

 冗談を匂わせながらも、緩く睨み付けた。

「んー悪ぃ悪ぃ」

 望木は睨まれた視線にも笑い、いつもと変わらぬ調子で頭を掻いてみせた。

 ――七斗、覚えてたのか……。

 二人の時がまだ一緒に流れていた頃の、無垢な思い出。七斗がそれからずっと、蝶を見ていたなんて、……。

 ――知らなかった。

 新聞を持つ手が、小刻みに震えている。七月はその小さな記事を、何度も読み返した。

 七斗はその蝶たちに何を見ているのだろう。

 もし、七月と同じなら。

 ――『街の中にも蝶は結構いるんですよね』

 そう語るのはギャラリーに展示される、これら全ての蝶の写真を撮った小池七斗氏。――

 ――七斗だ。

「ああそだ七月」

 何か言い残したことがあるのか、望木が立ち止まり振り返った。

「お前兄弟いる?」

「え? ……ん、いる」

 望木の唐突な問いに戸惑いながらも七月は頷いた。

 夜が明けた。

 立ち上がり窓辺に立つ。白みゆく空を見上げ、七月の姿を探す。

 七月は戻ってこなかった。

 傷ついた羽を、どこで休ませているのだろう。

 傷付け羽をもいだのはこの自分なのに。七月の不在が何よりも、……

 ――苦しい。

 その生を授かった時から一緒だったのに、何故一緒に生きては行けないのか。

 そして今日もその答えを求めるように、蝶の姿を求める。

 朝焼けの光が七斗を照らす前。

 七斗は鞄を手に、七月の部屋をあとにした。





 もうずっと以前から、蝶に囚われ続けている。

 無邪気な美しい思い出から始まったそれは、時に妖しく、時に苦しくなる程に蠱惑的に、七斗の心を奪い、惑わせてきた。

 ――七月。

 その背に羽が見えたのはいつ頃からだっただろう。

 その羽は、年数を経るごとに美しさを増していった。それに比例して、七月に対するえもいわれぬ欲望のようなこの感情が、大きくなってゆくのを感じていた。いや、この感情が大きくなってゆくにつれ、その羽の美しさが増していったのかも知れない。

 ふたり手を取り合って、庭へ降りた。雪駄を履いて、飛び石を渡る。岩の湯船の側に辿り着くと、小石が平らに敷き詰められた足場があった。

 そこにふたりで立つと、歩は慎治の帯に手を掛けた。

「もう脱がないとなんないの、勿体ないけど」
「だから適当な、っつっただろ」

 笑う慎治に歩も笑って、解いた結び目をするりと引いた。するとたった今着たばかりの浴衣がはらりとはだけ、慎治の身体が露わになる。

 歩は慎治に浴衣を脱がされながら、戯れに慎治の肌に手のひらを置いた。

 胸元から脇腹へと撫で下ろすと、慎治の腹がひくりと震える。コラ、と慎治に窘められるのも構わず、浴衣を脱がされたのを良いことに慎治に抱きついた。

「慎治さん、早くしたい」
「ん……」

 それが言葉だけじゃないと伝えるように、熱を持ち始めた下肢を慎治に押し付ける。慎治はそうだな、と優しく笑い、抱き締め返した歩の背をそっと撫でた。

 横に並んで湯に浸かると、ふたり同時にほっと長い息を吐いた。

「――歩」
「ん?」
「ありがと」
「?」

 何に対しての『ありがと』なのかが分からずに首を傾げて慎治を見ると、慎治は笑いながらゆっくりと歩に唇を寄せた。

「旅行の手配だよ。大変だったろ」
「いつも慎治さんがやってくれてることじゃん、ん……」

 ちゃぷん、と湯が小さな音を立て、唇が重なる。舌先が触れ合うと、歩の腰の奥でずくん、と快感が疼いた。

 そのまま口づけは深くなる。薄く開いていた唇が舌先を食み合うように動き始めた頃、慎治の手が伸びてきて、歩の猛りをやんわりと握った。


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歩×慎治

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たくさんの投票ありがとうございます(*´∀`)
コメントもたくさんいただきほんと感激す(´Д⊂ヽ
流れは一気にリバの方向へと進みそうすw
となるとドッチが先か、というところになってまいりますw
慎治がお疲れ気味なんで(気付いてくださった方まりがとんございます(´Д⊂ヽ)
より疲れが少ない順番はどっちか考えながら
このあとの妄想にムハーしたいと思いますw

引き続き投票受け付けたいと思いますので
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ぜひコメントとともに投票よろすくおながいします(*´∀`)






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