2ntブログ

2009年09月

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 無料貸与を始めて三週間。その間ジムの定休日の木曜日を覗き、生(いくる)は毎日洗濯したウェアを持ち、ジムに通った。

 最初こそ利用者が少なく、持参した枚数全て捌けないこともあったが、ここ一週間は毎日全ての枚数が何らかの形で利用されていた。今日のスタッフとの会話から、少しずつ購入者も出始めているようでもあり、感触は上々だ。

 手応えは、感じ始めていた。

 生(いくる)の働くスポーツ総合商社、株式会社ナシノでは今、新発売した製品の販売促進に力を入れている。

 大学卒業後、入社したこの会社で生は八年間経理部に勤務していたが、このたびの新製品発売に伴う営業部の大幅な人員補充を受け、この春から営業部に異動となった。法人営業の一端を任された生は、今訪問したスポーツジムを経営する会社の大元、購買部の担当だった。

「それでは今日も宜しくお願いします」
「はぁい」

 笑顔のスタッフに生(いくる)は再び丁寧に一礼し、受け取った荷物を箱に入れて小脇に抱えた。

「……っと、すいませ……あ」

 生が踵を返したその時、フロントに入ってきた男性客と肩が触れ合い、その拍子に生の脇から箱の中身がこぼれ落ちた。

 一.吉森生(いくる)



 ――笑顔は爽やかに。挨拶は、はっきりと。スポーツメーカーの営業らしく。

 全国にチェーン展開するスポーツジム、『ラクトスポーツ』の入り口、自動ドアの前。時刻は開店直後のチェックインに忙しい時間帯を避けた午前十一時。吉森生(いくる)は自らに言い聞かせ、そしてひとつ、深呼吸をした。

 一歩踏み出すと、クラブのロゴシールが一面に施されたガラスの自動ドアが左右に開く。すると眼前に、屋内の隅々まで明るい照明で照らされたフロントが広がった。

 柔らかい、キスの感触。

 眠りの淵にさ迷う意識のまま、それに応えた。

「ん……」

 何度も口付けを繰り返しながら、ゆっくりと覚醒へと導かれてゆく。

 瞼を開けると、慎治の穏やかな笑みが目に飛び込む。

 幸せだと、感じる。

 その気持ちのままに、歩は目元を和らげた。

ウチからもリンクを貼らせて頂いてます『落下』の紫江さんが
航平×司の二人を描いてくださいますたー(*´∀`)


航平×司
※クリックで大きくなります(*´∀`)


ブログ開設のかなり以前、サイトを持っていた(実はw)頃に描いた二人で
話数も少なく (てかたったの二話w)、色々拙くてお恥ずかしい限りなんですがw
シチュ自体は私も気に入ってる二人だたりします(*´∀`)
二人はともにハマっこ、
でも神戸っ子×横浜っ子(ていうより湘南あたり? 疎くてすいませんorz)す(*´∀`)
そしてこの二人はオトナなのに濡れ場のない唯一のカプでもありますw

話中じゃ司はエロさは内に秘めてるカンジ(のつもりw)すけど
イラストではもうすっかりエロさ全開で!(;゚∀゚)=3ハァハァ
華ひらきまくってるすねムハー(;゚∀゚)=3
紫江さん、ありがとうございました~!(*´∀`)







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「慎治さん、今、『オトコ』って……」

 折しも慎治の答えを合図に手早く布団を敷き始めた仲居におののくように身体を強ばらせて、慎治に不安げな視線を向けた。

『望月は人の願いを叶えるというそうだよ』

だから私たちも願おう。

月が満ちるたびに。

此度こそ、広い世に結ばれ、そして添い遂げようと。

褥の睦言にお前が言った。





甲冑を纏い、その美しい唇から一筋、紅を引いたような血を流しながら、俺の腕の中でお前は言う。

『今宵は望月だ……』

だから願いながら逝こう、と。

お前の最期の吐息を聞いたその時、俺の背に熱い一撃が穿たれた。

お前の身体に折り重なるように崩れ落ちながら俺は、そこに、二頭の蝶を見た。

この混乱の最中、この荒さんだ原野にどこから紛れてきたのか。

それは異世界へと俺たちを誘うようにひらりと舞う。

そうだ。

ならばこの蝶にこの想いを託そう。

今宵は望月。

その願いを背負い、時空を越えて、再び俺たちが巡り会えるように。

この記憶が、二人の記憶からなくなってしまったとしても。

結ばれ一つになる日が来るように。

この身が朽ちてもただ、その日を待ち望む。

見上げる空。

その眩い光に向かって、二頭の蝶はどこまでも高く、舞ってゆく。

美しい記憶をこの身に刻んで。



「健康面もな」
「ん、……」

 慎治は全て分かっている。慎治とともに、ふたり白髪となるまで。添い遂げたいと願う歩の思いまで。

 慎治の話ぶりや様子から、慎治が仕事を好きなのだということは分かる。今の仕事も大変ながら、慎治はそれを楽しんでいることも。そしてきっと、次に始める仕事も、あっという間に軌道に乗せてみせるのだろう。

「――忙しいのはあと、どんくらい?」

 慎治の健康は、それまで守られるのだろうか。

 一の膳を並べ終え、最後にビールを二本置いて、ソツない動きで仲居が部屋を出て行くと、ふたりは互いにビールをグラスに注ぎ合った。

「お疲れ」
「うん、慎治さんも、お疲れ」

 いつもの言葉でグラスを合わせ、カチリと小さな音を鳴らす。勢い良く最初の一杯を煽って、ふたりほっと、一息吐いた。

「よう七月、久々じゃん」

 七月の馴染みのバーで。人待ち顔でマティーニを舐めていた七月に一人の男が声をかけた。

「久しぶり。元気してた?」

 柔らかな笑みとともに挨拶を返す七月に見入りながら、男は七月の隣に腰を下ろした。

『で、七月。色校』
「ごめん望木、出来は望木的にどうだった?」
『うん? いい感じにできてんじゃね? 色の出方もいいし』
「じゃあ悪いけど、そのまま通してもいいかな。大井さんのOKもらって先方からもOKもらって……今回だけ、だから」

 望木はほんの一瞬驚いたように黙ったが、いつも仕事に真摯な七月の滅多にない頼み事だからか、微かに笑ってわぁったよ、と答えた。

「――歩」
「ん……」

 優しく揺すられ、心地好い眠りから覚醒へと甘く誘導される。

 ゆっくりと目を開けると、すぐ間近に慎治の笑みがあった。そのままその笑みのすぐ下、浴衣に視線を落とす。着ている浴衣はすっと張っていて帯まで皺もない。今起きたばかりというよりは、起きてしばらく経ったといった様子だった。

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