――約二十分後。
「俺はスケートの全てを悟った」
「は?」
何を寝ぼけたことを、と思った矢先、講習を終えて戻ってきた聡士がすーっと遠のいた。
「インストラクターの力って偉大だな」
満面の笑みで振り返った聡士が、今度は淳汰を見たまま遠のいてゆく。よく見れば、後ろ向きに滑っている。
「ちょ、おま、嘘だろ」
ほんの少しのレクチャーでここまでできるようになったのは、おそらくインストラクターの力というより聡士の運動神経のなせる技だろう。改めてこの男の身体能力の高さを思い知る。
ほんの一瞬抱いた淳汰のやらしい妄想は、アブクとなってぶくぶくと消えた。
****************
「いやースケート、おもしろいな! 久々にカラダ使って漲ったわ」
「――へ?」
運動なら平素より充分淳汰とやっているはずだが(?)、聡士にはほどよいウォームアップにでもなったと言いたいのだろうか。
「家帰ったらガッツリ、ヤろーぜ」
淳汰の肩に手を置いた聡士が意味深に笑う。
「こっの、体力魔人め……」
怒ったようにきつく聡士を睨みつけたつもりなのに、頬が熱くなる。
淳汰のその表情の変化を期待していたのか、聡士が満足そうに笑う。
その笑みは、淳汰がどう抗っても勝てない最強の武器。
「――帰るか」
「おう」
いつもの通り。
折れたのは、淳汰だった。
リンクだけが涼しい顔で、そんな二人の全てを見ていた。
おしまい
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「いってぇ……ってお前どんだけだよ」
「いやー……滑るな」
「当たり前だろ」
スケートなんだから、と毒づきながら各々(おのおの)で立ち上がる。
淳汰は小さい頃からスケートの経験があるため、従来の運動神経の良さも手伝ってそこそこ滑ることができる。
――ここが二人っきりの空間なら……。
珍しく淳汰が優位に立てるこの競技で、手取り足取り。
上手く滑ることのできない聡士に優しく手ほどきして、初めての体験に疲れてちょっと弱ったところを耳なんか軽く噛んだりそのまま冷たい氷上で服を脱がして抱いたり……
「おい、なんか初心者講習みてーのやるって言ってね?」
「あ、あ?」
相変わらずの鬱屈した日々からの逃避か、思いがけずやらしい妄想に耽っていたところを、聡士の言葉がさえぎった。
聡士が指差す先、メインリンクに横に併設されているサブリンクを見ると、わらわらと人が集まりだしている。
そこへ拡声器を持ったスタッフが、牛を追うカウボーイよろしくすいすい滑って集まった人を整列させ始めている。
「ちょっと行って来る」
「え?」
言うが早いか、リンクサイドに出た聡士がよたよたとサブリンクに向かいだした。
「――ちぇ」
講師スタッフの指示なんだろう、集った者全員が、及び腰でよたよたと歩いている。もちろんみんなより頭ヒトツ、いやフタツミッツ大きい聡士もやっている。
「ひとりだけスゲー目立つっつうの」
遠目で眺めて苦笑する。
見渡すと、女子の視線がちらちらと聡士に向けられているのに気付く。
「ワリーねソイツ、俺のオトコなの」
誰に聞かせるでもないが、呟いてみる。
こんな言葉をさらりとクチに出来るのも、愛されている自信があるからだろう。
――満たされてるな、俺。
苦笑は知らず、柔らかな笑みに変わった。
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「いやー……滑るな」
「当たり前だろ」
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淳汰は小さい頃からスケートの経験があるため、従来の運動神経の良さも手伝ってそこそこ滑ることができる。
――ここが二人っきりの空間なら……。
珍しく淳汰が優位に立てるこの競技で、手取り足取り。
上手く滑ることのできない聡士に優しく手ほどきして、初めての体験に疲れてちょっと弱ったところを耳なんか軽く噛んだりそのまま冷たい氷上で服を脱がして抱いたり……
「おい、なんか初心者講習みてーのやるって言ってね?」
「あ、あ?」
相変わらずの鬱屈した日々からの逃避か、思いがけずやらしい妄想に耽っていたところを、聡士の言葉がさえぎった。
聡士が指差す先、メインリンクに横に併設されているサブリンクを見ると、わらわらと人が集まりだしている。
そこへ拡声器を持ったスタッフが、牛を追うカウボーイよろしくすいすい滑って集まった人を整列させ始めている。
「ちょっと行って来る」
「え?」
言うが早いか、リンクサイドに出た聡士がよたよたとサブリンクに向かいだした。
「――ちぇ」
講師スタッフの指示なんだろう、集った者全員が、及び腰でよたよたと歩いている。もちろんみんなより頭ヒトツ、いやフタツミッツ大きい聡士もやっている。
「ひとりだけスゲー目立つっつうの」
遠目で眺めて苦笑する。
見渡すと、女子の視線がちらちらと聡士に向けられているのに気付く。
「ワリーねソイツ、俺のオトコなの」
誰に聞かせるでもないが、呟いてみる。
こんな言葉をさらりとクチに出来るのも、愛されている自信があるからだろう。
――満たされてるな、俺。
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抜けるような晴天。
広がるのは目を灼くほどの、銀盤。
――ここは。
「二十九センチふたつ」
ぎょっとした表情で、係員がエッジの付いた大ぶりな靴を二足、窓口越しの男二人に差し出す。受け取った二人は悠々と、ロッカールームに向かった。
「実は俺スケートしたことねんだよね」
二人で見ていたスポーツニュース、マオちゃんをぼんやり眺めながら聡士がぽつりと呟いた。「じゃあ行ってみようぜ」と、したり顔で誘ったのは潤汰だった。
そんなわけで聡士と潤汰、二人で屋外スケート場に来ていた。
「ちょ、待てって……わっ」
銀盤に乗っかった途端、覚束ない足元で潤汰を追おうとした聡士が早速しりもちを付く。180センチを超える聡士の転びっぷりはその動きまで大きい。驚いた他の客たちが一歩下がり、聡士の周りにはぽっかりと輪ができた。
「え、マジ?」
初めてならこんなものだろうと潤汰が予想していた以上というか以下というか、とにかく聡士のスキルの低さに誘った潤汰も目を丸くした。
「ちょ、手貸せって、手」
潤汰に助けを求めて差し出された手。ほんの少しの躊躇の後、潤汰はどぎまぎとその手を取った。
――だって人前で手とか、……。
がっしりと繋がった手。手袋ごし、感じる聡士の手に、柄にもなくときめいた。
などと感慨に浸ったのもつかの間、がっつり握られた聡士の手に、下に向かって負荷がかけられた。
「って……うわっ、ちょ……」
日頃乗っかられている分聡士の重さについては誰よりも詳しい自信はあるが、いかんせん想定外の体重移動だった。
今度は淳汰もろとも氷上に崩れ落ちる。
二人を避ける人の輪がさらに大きくなった……気がする。
→3/2へ
聡士×淳汰
おひさしブリーフ(;´∀`)
リア引越しに伴う&その他のリア多忙によりパソに全然触れませんw
3回完結まさかの聡士×淳汰w
少しばかりお付き合いください
じゃじゃ馬は引越しが済んだら再開予定です!
お待ちくださってる方、ありがとうございますつД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
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「実は俺スケートしたことねんだよね」
二人で見ていたスポーツニュース、マオちゃんをぼんやり眺めながら聡士がぽつりと呟いた。「じゃあ行ってみようぜ」と、したり顔で誘ったのは潤汰だった。
そんなわけで聡士と潤汰、二人で屋外スケート場に来ていた。
「ちょ、待てって……わっ」
銀盤に乗っかった途端、覚束ない足元で潤汰を追おうとした聡士が早速しりもちを付く。180センチを超える聡士の転びっぷりはその動きまで大きい。驚いた他の客たちが一歩下がり、聡士の周りにはぽっかりと輪ができた。
「え、マジ?」
初めてならこんなものだろうと潤汰が予想していた以上というか以下というか、とにかく聡士のスキルの低さに誘った潤汰も目を丸くした。
「ちょ、手貸せって、手」
潤汰に助けを求めて差し出された手。ほんの少しの躊躇の後、潤汰はどぎまぎとその手を取った。
――だって人前で手とか、……。
がっしりと繋がった手。手袋ごし、感じる聡士の手に、柄にもなくときめいた。
などと感慨に浸ったのもつかの間、がっつり握られた聡士の手に、下に向かって負荷がかけられた。
「って……うわっ、ちょ……」
日頃乗っかられている分聡士の重さについては誰よりも詳しい自信はあるが、いかんせん想定外の体重移動だった。
今度は淳汰もろとも氷上に崩れ落ちる。
二人を避ける人の輪がさらに大きくなった……気がする。
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