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じゃじゃ馬ならし(51)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「田辺――」

 山中の手が、大敬の頬をすり抜けるようにひと撫でし、そのままふわりと抱きしめられた。

「こう……昔から知ってる幼馴染が幸せそうなんとか見てるとまぁ、良かったな、って思う反面、ちょっと人恋しくもなるってもんだろ?」

 大敬を説得するような、同調を求めるような、大敬のカラダに染み込ませるような声で山中が話す。

 幸せそうな家庭を目の当たりにしたら、自分は自分だと分かっていても、羨ましくもなるだろう。想う相手がいるなら尚更、自分もその相手と一緒になりたいと、願わずにはいられないだろう。

 ――俺だって、……。

 同じだと思う。

 求められて、与えられる喜び。

 知ってしまったらもう、それなしではいられない。

 同調を、理解を、そしてほんの少し、自分の想いを乗せて。

 言葉で伝える代わりに、山中の背にそっと、腕を回した。

 山中が耳元で、ほっと息を吐(つ)いた。

「あー田辺来ねぇかなぁ、とか、来るわけねぇか、とか。必死になんねぇにはどうするかを知ってる大人は逆に必死だよな」

 『必死』

 山中の、あの余裕の影に、そんな姿の山中がいたというのだろうか。しかもその、山中が必死になっている原因が……。

 ――俺。

 うねりながら込み上げる、熱い感情。

 この気持ちを、なんと呼べばいいのだろうか。

「そんな風に思いながら帰ってきて、エントランスでお前見つけたときの俺の喜びようったら」

 なかったわ、と最後は呼吸だけで囁いて、山中は大敬を抱きしめる腕を強めた。



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参考:貴史×生


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