「いってぇ……ってお前どんだけだよ」
「いやー……滑るな」
「当たり前だろ」
スケートなんだから、と毒づきながら各々(おのおの)で立ち上がる。
淳汰は小さい頃からスケートの経験があるため、従来の運動神経の良さも手伝ってそこそこ滑ることができる。
――ここが二人っきりの空間なら……。
珍しく淳汰が優位に立てるこの競技で、手取り足取り。
上手く滑ることのできない聡士に優しく手ほどきして、初めての体験に疲れてちょっと弱ったところを耳なんか軽く噛んだりそのまま冷たい氷上で服を脱がして抱いたり……
「おい、なんか初心者講習みてーのやるって言ってね?」
「あ、あ?」
相変わらずの鬱屈した日々からの逃避か、思いがけずやらしい妄想に耽っていたところを、聡士の言葉がさえぎった。
聡士が指差す先、メインリンクに横に併設されているサブリンクを見ると、わらわらと人が集まりだしている。
そこへ拡声器を持ったスタッフが、牛を追うカウボーイよろしくすいすい滑って集まった人を整列させ始めている。
「ちょっと行って来る」
「え?」
言うが早いか、リンクサイドに出た聡士がよたよたとサブリンクに向かいだした。
「――ちぇ」
講師スタッフの指示なんだろう、集った者全員が、及び腰でよたよたと歩いている。もちろんみんなより頭ヒトツ、いやフタツミッツ大きい聡士もやっている。
「ひとりだけスゲー目立つっつうの」
遠目で眺めて苦笑する。
見渡すと、女子の視線がちらちらと聡士に向けられているのに気付く。
「ワリーねソイツ、俺のオトコなの」
誰に聞かせるでもないが、呟いてみる。
こんな言葉をさらりとクチに出来るのも、愛されている自信があるからだろう。
――満たされてるな、俺。
苦笑は知らず、柔らかな笑みに変わった。
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聡士×淳汰
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「当たり前だろ」
スケートなんだから、と毒づきながら各々(おのおの)で立ち上がる。
淳汰は小さい頃からスケートの経験があるため、従来の運動神経の良さも手伝ってそこそこ滑ることができる。
――ここが二人っきりの空間なら……。
珍しく淳汰が優位に立てるこの競技で、手取り足取り。
上手く滑ることのできない聡士に優しく手ほどきして、初めての体験に疲れてちょっと弱ったところを耳なんか軽く噛んだりそのまま冷たい氷上で服を脱がして抱いたり……
「おい、なんか初心者講習みてーのやるって言ってね?」
「あ、あ?」
相変わらずの鬱屈した日々からの逃避か、思いがけずやらしい妄想に耽っていたところを、聡士の言葉がさえぎった。
聡士が指差す先、メインリンクに横に併設されているサブリンクを見ると、わらわらと人が集まりだしている。
そこへ拡声器を持ったスタッフが、牛を追うカウボーイよろしくすいすい滑って集まった人を整列させ始めている。
「ちょっと行って来る」
「え?」
言うが早いか、リンクサイドに出た聡士がよたよたとサブリンクに向かいだした。
「――ちぇ」
講師スタッフの指示なんだろう、集った者全員が、及び腰でよたよたと歩いている。もちろんみんなより頭ヒトツ、いやフタツミッツ大きい聡士もやっている。
「ひとりだけスゲー目立つっつうの」
遠目で眺めて苦笑する。
見渡すと、女子の視線がちらちらと聡士に向けられているのに気付く。
「ワリーねソイツ、俺のオトコなの」
誰に聞かせるでもないが、呟いてみる。
こんな言葉をさらりとクチに出来るのも、愛されている自信があるからだろう。
――満たされてるな、俺。
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