「嘘、だろ……?」
にわかに信じがたい様子の貴史の答えに、唇を噛む。
「――でも貴史には」
優しい貴史だから。
言ったら困らせてしまうだろうか。
落ち込んでいる貴史を少しでも助けることができればと思って来たはずなのに、何を口走っているのだろう、と我ながら思いはしたが、もう止められなかった。
にわかに信じがたい様子の貴史の答えに、唇を噛む。
「――でも貴史には」
優しい貴史だから。
言ったら困らせてしまうだろうか。
落ち込んでいる貴史を少しでも助けることができればと思って来たはずなのに、何を口走っているのだろう、と我ながら思いはしたが、もう止められなかった。
「長く想ってる相手がいるって、七月くんから聞いたから。だから本当は、返そうと思って靴紐も買ってあったけど、迷惑かも、とか色々迷って結局返しに行けずじまいで……、……」
――ああ、言ってしまった……。
貴史の想う相手が自分の知り合いだと聞いたのに、これでは気まずくて結局貴史とも、もしかしたら貴史が想う相手とももう会えなくなる。
言った直後に、後悔が生を襲う。けれども三週間鬱々と溜め込んできた想いを全て吐き出して、すっきりしたのもまた確かだった。
どんな表情を見せればいいのか分からずに、今の気持ちのまま、泣き出しそうに顔を歪めた。
「――生」
貴史の手が、生の肩に乗せられ、生はびくりと身体を強ばらせた。生を覗き込む貴史と、恐る恐る視線を合わせると、貴史はどこか照れたような、けれども満面の笑みを浮かべた。
「うまく行ってねぇと思ってた俺の恋愛、今うまく行った」
「え……?」
再び見舞われた混乱に、また目を瞬たかせた。生のその表情を見て、貴史が更に笑みを深めた。
「七月が言ってた俺の片想いの相手って、生のことなんだよ」
「え……、嘘……だ」
長く想っている相手なら、生であるはずがない。
それなのに何故。
ますます来す混乱に瞳を揺らし、無言で貴史に説明を乞うた。
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「え……?」
再び見舞われた混乱に、また目を瞬たかせた。生のその表情を見て、貴史が更に笑みを深めた。
「七月が言ってた俺の片想いの相手って、生のことなんだよ」
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