2ntブログ

誰もがきっと、誰かの。(99)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「あの日、俺がイジけてねぇで生にちゃんと言っておけば、こんなに長くかかんなかったかも知んねぇのに」
「……、え……?」

 貴史が言わんとすることがまだ飲み込めなくて、僅かに首を傾げた。

 生のその仕草を、愛しいものを見るかのような目で貴史に見つめられ、思わず頬が熱くなるのを感じる。それを誤魔化すように瞬きしながら僅かに視線を逸らせ、貴史の唇辺りに視線の先を置いた。その唇がゆっくりと、言葉を発するために薄く開いた。

「――俺、あそこのラクトのメンバーなんだよ」

 貴史は少し向こう、ここからは見えないスポーツジムに視線を流してその地を示し、再び戻した視線で生を捉えた。

「……ぁ」

 今やっと、貴史と自分との接点が見えた。

 そこは生が三週間前まで、毎日通っていた場所。

 営業活動で、一杯一杯だった。覚えているのは先方のスタッフだけで、メンバーの顔まで覚える余裕はなかった。

「僕のこと、見たことあったんだ……?」

 申し訳なく思いながら尋ねると、貴史は苦笑して肩を竦めた。

「見たことあったどころか。何度か話もしたよ。ウェアの貸与をやってるからぜひって」
「そうだったんだ……」

 そういえば、ジム訪問時にフロント付近に居合わせたメンバーに何度が声を掛けた記憶はある。

 ――その中に、貴史が……。

 覚えていなかったことが悔やまれる。余裕が全くなかった自分。それだけ一生懸命だったと言えば聞こえはいいが、その視野の狭さに恥じ入りたくなる。

「でもどうして、今まで言ってくれなかったの」

 そうすれば、貴史を覚えていなかったことを、もっと早く謝ることもできたのに。

 三週間、誤解に悩まなくても済んだ、のに。




←98へ / →100へ
←1から読む


ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ランキング参加中す。よければクリック入魂一押ししてください。
 書く意欲に繋がってます(*´∀`)
携帯からはポイント反映されないことがあるようです(090907現在)
ぜひパソからの一押しお待ちしてます(*´∀`)



コメント
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 

 | Copyright © がっつりBL的。 All rights reserved. | 

 / Template by 無料ブログ テンプレート カスタマイズ