「あの日、俺がイジけてねぇで生にちゃんと言っておけば、こんなに長くかかんなかったかも知んねぇのに」
「……、え……?」
貴史が言わんとすることがまだ飲み込めなくて、僅かに首を傾げた。
生のその仕草を、愛しいものを見るかのような目で貴史に見つめられ、思わず頬が熱くなるのを感じる。それを誤魔化すように瞬きしながら僅かに視線を逸らせ、貴史の唇辺りに視線の先を置いた。その唇がゆっくりと、言葉を発するために薄く開いた。
「……、え……?」
貴史が言わんとすることがまだ飲み込めなくて、僅かに首を傾げた。
生のその仕草を、愛しいものを見るかのような目で貴史に見つめられ、思わず頬が熱くなるのを感じる。それを誤魔化すように瞬きしながら僅かに視線を逸らせ、貴史の唇辺りに視線の先を置いた。その唇がゆっくりと、言葉を発するために薄く開いた。
「――俺、あそこのラクトのメンバーなんだよ」
貴史は少し向こう、ここからは見えないスポーツジムに視線を流してその地を示し、再び戻した視線で生を捉えた。
「……ぁ」
今やっと、貴史と自分との接点が見えた。
そこは生が三週間前まで、毎日通っていた場所。
営業活動で、一杯一杯だった。覚えているのは先方のスタッフだけで、メンバーの顔まで覚える余裕はなかった。
「僕のこと、見たことあったんだ……?」
申し訳なく思いながら尋ねると、貴史は苦笑して肩を竦めた。
「見たことあったどころか。何度か話もしたよ。ウェアの貸与をやってるからぜひって」
「そうだったんだ……」
そういえば、ジム訪問時にフロント付近に居合わせたメンバーに何度が声を掛けた記憶はある。
――その中に、貴史が……。
覚えていなかったことが悔やまれる。余裕が全くなかった自分。それだけ一生懸命だったと言えば聞こえはいいが、その視野の狭さに恥じ入りたくなる。
「でもどうして、今まで言ってくれなかったの」
そうすれば、貴史を覚えていなかったことを、もっと早く謝ることもできたのに。
三週間、誤解に悩まなくても済んだ、のに。
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「そうだったんだ……」
そういえば、ジム訪問時にフロント付近に居合わせたメンバーに何度が声を掛けた記憶はある。
――その中に、貴史が……。
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