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Sister Moon(38)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「……今日、月きれいね」

 マスターがふと窓に目を向けて、話しかけるでもない様子で呟いた。彼の視線を追って慎治も外に目を向けると、通りの向かい、建ち並ぶビルの上で白い月がひっそりと、静かに慎治を見ていた。

 慎治はその月と同じ冷えた目で、じっとその光景を見た。その視線の温度に微かに笑って、彼はまた、慎治の髪を撫でた。

「慎治、私たちはね、太陽の下での人生を謳歌することは難しいかもしれないわ。……でもね、陽の当たらない世界でも、幸せは存在するの。そして、全ての人が幸せになる権利は、誰にも奪えない」
「……、……」

 そんな言葉は建前に過ぎないと、白々しい気持ちを隠さずに、小さく首を竦めてみせた。そんな慎治の反応にも彼はいよいよ笑みを深め、撫でていた髪をくしゃりと握った。

「――慎治、幸せになりなさいね。大丈夫よ、あなたも絶対なれるから」

 彼の過去のことは全く知らないが、これが多くの人間を相手にしてきた者が持つ豊富な経験から来る説得力なのだろうか。そんな建前も、彼の声で力強く言われれば、なぜか叶うんじゃないかという気がしてくる。

「……、……うん」
「よくできました」

 慎治が小さな声とともに頷くと、彼は満足そうに笑った。そしておもむろに身体を折ったかと思うと、慎治が身構える間もなく唇が重ねられた。奪うように深く舌を絡め取られ、盛大な音とともに吸い上げられる。

「っ、っにすんだ、よ」

 眉を顰めてぐいと唇を拭う慎治の様子も気に留めた風でもなく笑って、じゃあね、と彼は立ち上がった。

「ごちそうさま。まだクスリが残ってたら、あとは自分でやんなさいよ」

 冗談とも本気ともつかない様子で笑い、はい、とティッシュの箱を慎治に投げてから、彼は部屋を出て行った。



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歩×慎治


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コメント
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2010/04/15(木) 02:00 | | #[ 編集]
こばわ~(*´∀`)
>秘密コメ↑Mさん(*´∀`)

こばわ~今夜もお越しまりまトンございますた!
更新をお休みしたくなるほど凹んじゃたんすね(;´Д`)
でもそゆ時の嬉しいコメがまた染みますねぇ(*´∀`)
私もほんと頂いたコメには助けてもらってきますた(´Д⊂ヽ
えええええっいやいやいやいやいやトンでもなすですw
ああでも私をきっかけにひとりでも腐仲間が増えたのなら
ウレシスでし(*´∀`)
ムリせずがんがてください(*´∀`)
ありがとうございますたー!


2010/04/16(金) 00:24 | URL | ベラ #-[ 編集]
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