きちんと手入れされた靴。自分で磨いているのか、それともやっぱり誰かが定期的に手入れをしているのだろうか。あの写真の――女性(ひと)か。
あの夜のことはなんだったのだろう。
あの夜のことはなんだったのだろう。
報告が遅れたことは自分が公私混同してしまったが故に違いない。
けれども大敬にとってあの出来事は、なにもなかったこととして流せるような些細な出来事ではない。
それさえ理解しえぬほどに山中は、自分を些細なものとして見ているのだろうか。
それとも山中ほどのエリートともなると、遊びも仕事もさらりとこなしてしまうのだろうか。そして大敬も同じだと思っているのだろうか。
――俺は、……。
何が気になって山中に意地を張ろうとしているのか自分でも分からなくなっていた。
妻子の存在か、あれ以来山中から何のフォローもなく、山中の意図が読めないことか。
そもそもタチである自分を、山中は大敬の了解を得ないまま、いとも容易くウケに回らせたのだ。自分がゲイだとかそれ以前の問題で、酒に酔わせてセクハラされたと、その気になれば訴えることだってできる事態だ。自分はもっと山中に強く出てもいいはずなのに、何故自分は今、山中のひとことで俯いているのだろう。
答えの出ない自問に、ぎゅっと眉を寄せた。
「――で、いくつ確保できたんだよ」
先刻より幾分穏やかになった山中の声が、大敬を自問から呼び戻した。
今はなにより、商品の確保が最優先事項だ。
はっとして顔を上げ、机上のメモを手に取った。
「えと……九百二十、です」
「各支店、営業所には同報で一斉にメールはしてあるのか」
「はい。ただ、反応は薄いです」
「見せてみろ」
山中はいつもの淡々とした口調で、大敬のパソコンを覗き込んだ。
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大敬、ぐるぐるしてまつw
でも実は大敬より誰より
ぐるぐるしてるのは私だたーり\(^o^)/オワタ
けれども大敬にとってあの出来事は、なにもなかったこととして流せるような些細な出来事ではない。
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今はなにより、商品の確保が最優先事項だ。
はっとして顔を上げ、机上のメモを手に取った。
「えと……九百二十、です」
「各支店、営業所には同報で一斉にメールはしてあるのか」
「はい。ただ、反応は薄いです」
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山中はいつもの淡々とした口調で、大敬のパソコンを覗き込んだ。
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