トモダチ以上とはいうけれど（３）

　さりげなく隣に座ったと思ったら、そんな話題か。女ってのはいつもそういう話題ばっかなんかな。

　泰司は苦笑し、それでも大して気分も害する事なくごく普通に村上に答える。

「享一？　居るとは聞いてないけど。詳しくは分かんないな」

　――ゴム持ち歩いてるくらいだしな。

　誰に使うつもりで持ち歩いてるんだろう。そういや時々俺にも使ってるよな……。

　それはさすがに報告できないか。

　へへ、と誤魔化すような笑みを村上に向ける。

「あんたたちよくつるんでんじゃない。その程度なの？」
「そんな話しないよ」

　女の物指して考えないで欲しい。泰司は小さく首を竦めた。


「じゃ誕生日は？　好きな食べ物とか、好きなタイプとか」
「誕生日は……四月だっつってたな。日は覚えてない。食べ物は……飲み行くといつももずく酢頼んでるから、好きなんじゃねぇ？　タイプは……そういう話しないから分かんないな」
「……役に立たない情報ばっかだね、入沢」

　遠慮のない村上の物言いに悪かったな、と笑って返す。

「村上、享一狙ってんの？」
「ミカコがね、ちょっと」
「ふーん……」

　村上とよく一緒にいるミカコという女をぼんやりと思い出してみる。どちらかと言うと大人っぽい、可愛いよりは美人なタイプという印象だ。なんでも一人でできそうに見えるが、本当に村上にリサーチを頼んだんだろうか。村上に疑いの眼差しを向ける。なによ、と少し怯む村上になんでもない、と笑って、ぼそぼそと講義する教授に視線を戻した。

　享一とミカ某が二人並んだところを想像してみる。大人っぽい二人はなかなかお似合いかも知れない。享一が彼女と付き合うようになれば、多分今まで程には一緒にはいられなくなる。――そしたら退屈な夜、俺はどうやって過ごせば良いんだろう。俺にも誰か、要るかな。

「なぁ村上、合コンセッティングしてよ」

　泰司から情報を得るのを諦めて、睡眠を取り始めていた村上をシャーペンで突っつく。

「わ、ホント？　高見君連れて来てくれんの？」
「や、享一は誘わないけど」
「は？　なにソレ」




　村上が多分渋々設定してくれた合コンはそれでも意外に可愛い子も集まっていて、それなりに楽しかった。押せ押せなオンナノコに誘われて二人で抜け出す事にもなった。

　けれども所謂そういう事になるのかと思いきや相手に門限があるとかで、結局何もコトに及ばないまま終電ギリギリに駅まで送り届けさせられた。仕方なく泰司も帰るための電車に乗った。



「――あれ？」

　自分の部屋に帰るつもりだったのに、どういう訳か気がつけば享一の部屋の前に立っていた。しばらく呆然とドアを見つめ、せっかく来たんだから、と呼び鈴を押した。

　程なくドアが開き、煙草を咥えた享一が姿を見せた。

「……どうした？」

　玄関の中を覗いてみる。女物の靴はなさそうなのを確認して、泰司はちょっとほっとした。

「いやなんでも。……飲まねぇ？」

　享一が泰司の手元見る。手ブラで来ておいてそれを言うか、と冗談めいた口調で笑った。

「……オプション付きで良ければ」

　にや、と笑って享一が答えた。泰司も釣られたように笑う。

「うん……つうかむしろオプション標準装備希望で」

　泰司は拳でとん、と享一の胸を小突いた。

　――もうしばらくはイイよな？　俺の一番心地良い場所はやっぱ享一の側だと、今俺のココロが言った。

　俺の、一番のトモダチの側が。



おしまい


ホンットーに作中に女出すのイヤです(；´Д｀)
男ばっかで合コンとかすればイイのにwwwww


羞恥プレイ的過去作品享一×泰司よろしければこちらもドゾー


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