好きすきスキと言わせたい（４）

「男同士だとこういう店入っても文句もねぇし凄ぇラクでイイね」
「ん、そだね」

　榛名が静かに微笑んで相槌を打つ。その笑みにクラクラと魅了され、酒も普段に増して早く回る。

「俺も榛名さんみたいなカッコもしてみてぇな……」

　イイよねコレも、と酔いに任せて怜史が手触りの良い不思議な幾何学模様のシャツを、榛名の腕の上からするり、と撫でる。榛名の指先がほんの少しぴくりと震えたが、酒と榛名に酔った怜史は気付かなかった。

「俺ので良ければ、あげるよ」
「え、マジ？　いーの？」
「いいよ。増えてくばっかりだからね。……今からうち来る？」

　興奮で大きく目を見開いて、怜史はただもう何度も首を縦に振った。



　汚いけど、と通された榛名のマンションは、汚いというよりは積み上げられた雑誌や資料でただ雑然としている、という印象だった。ニ部屋のうち一室が寝室兼リビング、もう一室は服で埋め尽くされていた。

「スッゲー……」
「買い込んでたらいつの間にかこんなになっちゃってて」

　榛名が少し恥ずかしそうに苦笑する。

　ハンガーにかかったたくさんの洋服の一角を一枚ずつ繰ってみる。これら全てを榛名が選んで、袖を通したのかと思うとそれだけで胸が熱くなる。

「なんでも好きなの、持ってっていいよ」
「あーもー榛名さん……ごめん」

　怜史のためにか、慣れた手つきで服を選っていた榛名の腕を、怜史が後ろから掴んで引き寄せた。

「……え」

　少し驚いた表情で振り返る榛名をその動きの延長線上に抱き締めた。

「服より、榛名さんが欲しいな、とか……」

　身長差はほとんどない。抱き締めた肩越し、怜史は榛名の耳元にだめ？　とねだるように囁いた。

　感じる息遣いで榛名が微笑んだのが分かる。

「……いいよ」

　榛名がそっと、怜史の背に腕を回した。


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