好きすきスキと言わせたい（10）

　恋愛の答えを、こんな所――ネットの世界――に探し求めるのは自分でもバカバカしいのは分かってる。でももし答えがあるなら、どんな形ででも知りたかった。

　けれども出てきた答えはどれも怜史の中で既に繰り広げ済みの、葛藤の声ばかりだった。

『他の人に目を向けてみる』

　恋愛対象としては女ばかりだったけど、今まで散々色んなのを見てきてそれでも榛名がイイと思ったのだ。他に目を向けるなんて。

『まずはあなたが愛を注ぎましょう』

　出合ってからもうすぐ三ヶ月。今まで怜史からは充分過ぎる程に愛情表現してきたつもりだ。本当はいつでも側に居たい。触れて、抱き合って、キスして、榛名の中に入りたい。それをメールで、電話で、会えた時には直接、伝えてきた。

　――俺が知りたいのは、榛名さんが俺をどう思ってんのか、それだけなんだけど。榛名さんが俺と付き合ってるのは、今回たまたま俺が榛名さんに言い寄ったから、ってだけ？

『一旦距離を置いてみる。それで反応がなければ見込みなし』
『駆け引きなんかやめた方が良い』

　――距離を置く。

　この文字を目で追っただけで息苦しくなりそうだった。

　それは今まで一日に何通も送っていたメールを止める事。会いたい、と伝えるのを止める事。実際会うのを止める事。

　――できんのか、俺……？

　駆け引きめいた事をするのは実際危険かもしれない。それにも増して佐伯の言葉は怜史の心の奥底をチクチクと刺した。考えれば考える程、榛名が自分を選んで付き合ってるとは思えなくなってくる。だから、丁度良いタイミングなのかもしれない。

「――一週間、だけ。それでダメなら――そん時考えよ」

　怜史はテーブルの上に置いた携帯に手を伸ばすと、決意表明のようにその電源ボタンを長押しした。



　一日目。

　あまりよく眠れなかったのか、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。すぐに携帯の電源を入れる。新着メールを問い合わせて、榛名からはメールがない事にやっぱり、と落胆して唇を噛んだ。

　この日は幸い仕事があった。今までメールを送っていた代わりに、手が空く度に新着メールの確認をする。

「あーもー……」

　イラつく。何がって、何もできない事が。自分からメールをすれば、きっと返事もあったはずなのに。早くも挫けそうになる自分をもう少しだけ、と叱咤して、再び携帯の電源を切った。


11へ→

１から読む→


↓よければポチっと押してクダサイ