「先生と生徒の関係なんて、とてもスキャンダラスだと思いませんか。その上、同性ですよ」
ねぇ、と慎治に同意を求めるように、深井に覗き込まれる。その視線には応えずに、慎治は眉を寄せて深井から視線を逸らした。
二人の関係に障壁はなくなったが、二人の社会的立場の違いは、まだ二人の関係を公にすることを許してはくれないだろう。否、たとえ村上が社会人になったとしても、男子校であるN高の教師が同性と関係を持つことができる人間だとは、公にできることではない。
ねぇ、と慎治に同意を求めるように、深井に覗き込まれる。その視線には応えずに、慎治は眉を寄せて深井から視線を逸らした。
二人の関係に障壁はなくなったが、二人の社会的立場の違いは、まだ二人の関係を公にすることを許してはくれないだろう。否、たとえ村上が社会人になったとしても、男子校であるN高の教師が同性と関係を持つことができる人間だとは、公にできることではない。
二人がその立場と関係を守りたいと願うなら、このことは格好の強請りのネタになり得ることだった。
それを、この男が知っている。
危険だと、慎治の身体の奥底で本能が訴える。
じりじりと、苛立ちが募る。
「――君の学校なら、マスコミに嗅ぎ付かれてもそれを揉み消すことくらいわけのないことなんでしょうけれど」
深井は慎治の苛立ちなど気にも留めた様子もなく、淡々と、流れるように話し続ける。
そして訪れる、もったいぶったような間。
まもなく、核心に触れてくるだろうと、ひっそりと身構える。
今からとどめを刺すからと、慎治に心の準備を促すかのように、深井が薄く笑ったまま手にしていたグラスを口元へ運ぶ。
グラスが深井の口元から、コトリと音を立ててカウンターに戻された。
口に含めたブランデーが深井の喉を通り、彼の喉仏が小さく上下する。
その小さな動きを、慎治は睨み付けた。
「学校側に知られることになったら、少なくとも桑山先生と、君のお友達には何らかの処分は下るでしょうね」
どう思いますか、とさも白々しく慎治に問いを向け、深井は全て言い終えたと言わんばかりに一息ついた。それきり彼は口を閉ざして、慎治の答えを待った。
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じりじりと、苛立ちが募る。
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深井は慎治の苛立ちなど気にも留めた様子もなく、淡々と、流れるように話し続ける。
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まもなく、核心に触れてくるだろうと、ひっそりと身構える。
今からとどめを刺すからと、慎治に心の準備を促すかのように、深井が薄く笑ったまま手にしていたグラスを口元へ運ぶ。
グラスが深井の口元から、コトリと音を立ててカウンターに戻された。
口に含めたブランデーが深井の喉を通り、彼の喉仏が小さく上下する。
その小さな動きを、慎治は睨み付けた。
「学校側に知られることになったら、少なくとも桑山先生と、君のお友達には何らかの処分は下るでしょうね」
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