本当のところ、桑山のことなどどうでも良かった。
彼を村上から引き離すことができるのならば、村上に恋心を抱く慎治にとってはむしろ喜ばしいことだとさえ思える。
そして恋人を失った村上を慰め、そうすることで村上の心が慎治のものになり得るのなら――。
けれどもそうは行かないということは、慎治が誰よりもよく知っている。
村上をよく知らない連中からは天然とも称される、あの緩い笑みの下には、たとえ不道徳だと後ろ指差されるようなことがあろうとも、愛した男――かつては妻帯者だった桑山を、一途に想うひたむきさが隠されている。
彼を村上から引き離すことができるのならば、村上に恋心を抱く慎治にとってはむしろ喜ばしいことだとさえ思える。
そして恋人を失った村上を慰め、そうすることで村上の心が慎治のものになり得るのなら――。
けれどもそうは行かないということは、慎治が誰よりもよく知っている。
村上をよく知らない連中からは天然とも称される、あの緩い笑みの下には、たとえ不道徳だと後ろ指差されるようなことがあろうとも、愛した男――かつては妻帯者だった桑山を、一途に想うひたむきさが隠されている。
余計な世話だということは分かっている。
けれども村上の身に何らかの厄災や不幸が降りかかるのを見過ごすことはできない。
やっと勝ち得た村上の幸せが、その笑みが、壊れてしまうのはもう見たくはなかった。
それを慎治自身の身で守ることができるなら。
薄く笑って慎治を見る、目の前の男をじっと見た。
この男の目的は何か。
当人達に話すことだってできるはずの桑山と村上の二人の関係を、敢えて慎治に話したことの理由を考える。
今日偶然慎治を見かけたという深井の言葉は、おそらく嘘だ。
この男は全てを見抜いた上で、慎治に取引を持ちかけているのだろう。おそらく全ては綿密な計画の下で展開されていることに違いない。
すべては慎治から、この台詞を引き出すために。
「……で、俺はどうすればいんだよ」
長い沈黙の後、やっとの思いで搾り出した言葉。
深井は、慎治が最後にはその台詞を吐くと分かっていたというように、満足そうに笑った。
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この男は全てを見抜いた上で、慎治に取引を持ちかけているのだろう。おそらく全ては綿密な計画の下で展開されていることに違いない。
すべては慎治から、この台詞を引き出すために。
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