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じゃじゃ馬ならし(3)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「お疲れ」
「お疲れす」

 山中がグラスを差し出すと、大敬はそのグラスより少し低い位置からグラスを差し出し、ごく小さな会釈とともにグラス同士をカチリと合わせる。

 まずは一杯。

 山中がグラスを空けると、すかさず瓶を手に持ち空いたグラスに再びビールを注ぐ。山中から瓶を差し出されると、ビールが満たされたグラスを一気に飲み干して、その酌を受ける。これも全て身体に染みついた、体育会のならわしだった。

 忙しなく最初に頼んだ数品が運び込まれるのを待って、ほっと一息、ようやく山中が身を乗り出した。

「――そろそろ一か月だけど、調子いいじゃねぇかよ、『スポーツD』」

 満足そうに笑って、山中が大敬の担当するスポーツ量販店の名を挙げる。

「あざす。おかげさまで、なんとか軌道に乗ってきたみたいすね」

 わざわざ大敬一人を指名しておきながら、ただ褒め労うだけでは話は終わらないだろう。そんな事を考えながらも、大敬も負けじと爽やかな笑みを山中に返す。

「勘がいいんだろうな、何事においても。相手の懐にすっと入ってくるような要領のよさもあるし。社内だけでなく取引相手ともうまくやってけてるみてぇだな」
「いやそんな、まだまだ新人のつもりでやらせてもらってますよ」
「その受け答えがまた印象いいんだろうな」

 山中は、女子社員が裏でその笑みで口説かれたいと噂する、ゆったりと構えた笑みを大敬に向け、またビール瓶を傾ける。

 一方大敬は山中の酌を受けながら、どこまで持ち上げるつもりなんだと腹の底で警戒しつつ、けれどもそれはまるで表に出さずに人懐こいと皆に称される笑みで曖昧に首を横に振る。

 いざとなれば信頼できる上司だと、彼の下で何年か働いて知ってはいたが、今夜はどこか腹の探りあいのような空気を感じる。その雰囲気に飲まれてしまわないようにと、既にもう飲まれてしまっていることにも気付かずに、大敬はビールで満たされたグラスをゴグリと飲み干した。


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参考:貴史×生


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