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雨がやんだら(15)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 出て行く歩に声をかける事もなく、立ち上がる事すらできないまま、ドアの閉まる音が部屋に響いた。慎治はゆっくり、一度瞬きをして、やっと動けるようになった自分を確かめるように、長い溜息を吐いた。

 ――これで良い。十も歳の違う相手との関係なんか、すぐ破綻が来るに決まってる。俺が去らせたくなくなってしまう前に、歩を去らせてやって……きっとこの帰り道にでもまた誰かに拾われて……悪いヤツに引っ掛かってないと良いんだけど。

 チリチリと腹の底が痛む。

 去り際の歩の表情が目に浮かぶ。

 傷付いた顔をしていた。……俺が傷付けた。歩が俺に伸ばした手を、……振り払った? 俺が? 傷付いた姿が見ていられなくて最初に声をかけたのは俺なのに。最後まで面倒見てやれなかったのは……己の保身のため?

「……俺って……臆病……?」

 ――逃げてく相手引き止めた事あるワケ?

 先日のマスターの言葉があの声で頭の中を木霊する。悪夢のようだ。けれどもその悪夢が、返って慎治を思い切らせた。

「引き止めてみようじゃねーの」

 俺で歩が癒えるなら。――いや、そうじゃない。俺が、歩を手放したくないんだ。もう認めろ俺。

「俺次の月曜休みだったよな?」

 慎治はちら、とカレンダーを見た。



 近づいてく。
 近づいてく。

 そんな歌が頭の中でリフレインする。月曜日。慎治はM大附属高校の門の前に来ていた。今は長期休暇の時期ではない。三年生だと学校に来てない可能性もあるが、歩が言っていた「生まれて十六年」。この言葉通りなら今歩は十六だ。ということは少なくとも三年生ではない。

 兄への想い全てを隠していた歩が、土曜慎治に傷つけられたくらいで学校を休んで家の者に心配をかけると言う事も多分ないだろう。テスト期間はいつぐらいだったか忘れた。万一テスト期間中で早かったらこのぐらいに下校か、と目星を立てたのは結局午前十時だった。

 今門は閉まっている。普通に考えて、下校時刻が近付けばあの門が開けられるのだろう。それまでずっと前に立っている訳にも行かない。怪しい男が立っていると通報されて捕まったら元も子もない。辺りを見渡すと、道路を挟んだ向かいに監視に格好の喫茶店があった。慎治はそこで歩を待つ事にした。

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