人気のない校舎。ジワジワと鳴く蝉の声と、カキーン、と定期的に鳴る野球部のノックの音が遠くから聞こえてくる。
三垣は一人、新聞部の部室にあるパソコン前の椅子にぼんやり腰掛けていた。夏休みに入ったのに、特に何の用も無くても部室に顔を出してしまう自分を忌々しく思い、誰もいないなら一服でもするか、と胸に忍ばせた煙草に手をかけた。その時、がちゃりと部室の扉が開く音がして、三垣はその手を止めた。
三垣は一人、新聞部の部室にあるパソコン前の椅子にぼんやり腰掛けていた。夏休みに入ったのに、特に何の用も無くても部室に顔を出してしまう自分を忌々しく思い、誰もいないなら一服でもするか、と胸に忍ばせた煙草に手をかけた。その時、がちゃりと部室の扉が開く音がして、三垣はその手を止めた。
「あ、部長。やっぱり、来てらしたんですね」
ひょこっと顔を覗かせたのは、村椿だった。
「お、ツバキか。どした?」
三垣は胸に置いた手を、そっと戻した。純情そうなツバキには、高校生の喫煙シーンは見せない方がいいだろう。入ってきたのが喫煙前だったことに、三垣は少しほっとした。
「ちょっと……また新しいのを、書いてみたので、読んでもらおうと思って……」
三垣の側まで来た村椿は、恥らった表情で、レポート用紙を三垣に手渡した。
今回は、職場結婚を間近に控えたこの学校の教諭に関する記事だった。二人の馴れ初めからデートの目撃情報、はてまた本人のコメントまでとってある。文章も的確で、上手く脚色も加えられ、号外として二人の餞にもなりそうだ。
いったいいつのまに。いや、事務処理能力が無かっただけで、記事をかく力は最初からあったのかもしれない。
うんうんと頷いて三垣はレポートを村椿に返した。
「いいじゃん? 休み明けすぐの号外に、これ使おうか。確か二人は夏休み中に式を挙げるはずだから、その辺の取材も、ぬかりなくな」
「はい!」
三垣がレポートを読む間、心配そうに三垣の表情を伺っていた村椿が、ぱっと破願する。
――これだ、これ。どうもツバキの急な表情の変化に弱いな。
溢れんばかりの村椿の笑顔にどぎまぎしながら、三垣は手持ち無沙汰に何となくぱちりとパソコンの電源を入れた。
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ひょこっと顔を覗かせたのは、村椿だった。
「お、ツバキか。どした?」
三垣は胸に置いた手を、そっと戻した。純情そうなツバキには、高校生の喫煙シーンは見せない方がいいだろう。入ってきたのが喫煙前だったことに、三垣は少しほっとした。
「ちょっと……また新しいのを、書いてみたので、読んでもらおうと思って……」
三垣の側まで来た村椿は、恥らった表情で、レポート用紙を三垣に手渡した。
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いったいいつのまに。いや、事務処理能力が無かっただけで、記事をかく力は最初からあったのかもしれない。
うんうんと頷いて三垣はレポートを村椿に返した。
「いいじゃん? 休み明けすぐの号外に、これ使おうか。確か二人は夏休み中に式を挙げるはずだから、その辺の取材も、ぬかりなくな」
「はい!」
三垣がレポートを読む間、心配そうに三垣の表情を伺っていた村椿が、ぱっと破願する。
――これだ、これ。どうもツバキの急な表情の変化に弱いな。
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