アイツ俺がロングシュートキめたらどんな顔するんだろう（２）

　さらさらと、音がしそうな髪を揺らして智裕がベッドの縁に腰を下ろす。まだ煙草に手を伸ばしていた晧市を睨み付けてそれを制した。晧市は分ぁったよ、と伸ばした手を引っ込めて肩を竦めた。そのままその手を智裕の腿に伸ばす。

「晩飯、食ってないだろ。母さんに言ったら持ってけ、って。弁当」

　伸びてきた晧市の手を慣れた様子で払い除け、手にしていた袋を晧市の脇に置いた。

「……ありがと」

　――色々見透かされてるな……。

　軽くあしらわれた手をヒラヒラ振りながら、置かれた紙袋と智裕とを交互に見遣る。

「スリーポイント、逃したな」
「おう、良かったな智裕」

　変わらず不貞た表情のままで智裕を見上げた。

「……楽しみにしてたのに」
「嘘つけよ」

　智裕が苦笑して、晧市の額に手を置いた。

　覗き込まれ、不意に唇が重なった。

「……」

　額に乗せられていた手を取ろうとすると、晧市の動きを予測していたかのようにひらりとかわされた。

「次は来年の球技大会だな」

　智裕は立ち上がり、晧市に背を向けた。

「……そんなに待てるかよ」
「焦るなって。俺は逃げないから」

　戸口に立った智裕が振り返り、極上の笑みを残して部屋を出て行った。

「逃げねーけど拒否るくせによっく言う……」

　溜め息一つと共に起き上がり、紙袋の中を覗いた。中には弁当箱と、包装された小さな箱。

「たまには引いてみるってのも悪くないな」

　包装を解いて、出てきた焼き菓子を口に放り込む。

　確信ばかりが深まってゆく。あとは時が熟すのを待つだけなのは分かってはいるけれど。

「待てないお年頃なんだよな……」

　また計画練らねーとな、とニンマリ笑って咀嚼する。

　まずはホワイトデーに降ってきたキスを忘れないようにと、甘い菓子と一緒に飲み込んだ。



おしまい


←１へ戻る


****************************************************
皓市は父子家庭す。
小学校低学年で母親を亡くしてるんですが、
智裕は幼馴染なので皓市の母親の事もよく知ってます。
幼馴染の醍醐味…(;´Д｀)
****************************************************



↓よければポチっと押してクダサイ
　 書く意欲に繋がってますｖ