24/7(twentyfour-seven)（１）

　翻訳を生業としている泰司が扱うものは様々だが、資料が手元に送られてきていた場合、仕事が上がると大抵その資料の返却が求められる。上がった仕事自体はメール添付でデータとして送れるのだが、今日もある医療機器の取扱説明書を、送られてきた資料と共に依頼主に返送する所だった。

「ん……お願いします」

　生欠伸を堪えながら泰司は笑みを向けた。

「入沢さん……俺が来る時いつも眠そうっすよね」

　遠慮がちに山井が泰司を覗き込む。泰司はまーね、と頭を掻いた。

「来てもらう時はいつも徹夜明けばっかだから。……汚ねぇっしょ？」

　泰司が両手を上げてヨレた衣服を見せて苦笑する。

「いや、充分……」

　何かを言いかけて、言葉を濁す。

「入沢さん、今度一緒に飯でも、どすか？」
「ん？　いーよ。いつも無理聞いて貰ってるから奢るよ」

　あっさり返った良い返事に山井の表情が明るく変わる。

「奢るなんてそんな……一緒に飯食えるだけで充分す。今度の金曜、俺休みなんで空いてるなら」
「ん、金曜ね。いーよ。酒飲むっしょ？　どこで待ち合わせる？」

　山井の表情の変化も特に気に留めた様子もなく、泰司が眠そうな瞳で山井に問いかける。

「じゃあ、６時に駅で。駅前のパン屋の二階にえんじ屋って創作料理の店があるんですけど。知ってますか？　旨いすよ」
「んなトコ店あったんだ。そこでいーよ。待ち合わせは駅？　店に直接でもいいけど」
「じゃあ駅前で待ってます。ないと思いますけど入沢さんが先だったら店入っておいて貰ってもいいですよ。山井で予約入れておきます」
「ん、分ぁった」
「これ、俺の携帯番号です。下にアドレスも書いてますんで何かあれば電話かメールで連絡もらえれば」

　山井は運送会社のキャラクターが印刷された名刺を差し出した。名前の下には手書きで携帯番号とアドレスが書かれている。

　じゃあ、と欠伸半分で山井に手を振り軽く見送り、受け取った名刺を無造作にスウェットのポケットに入れた泰司は、ベッドに潜り込むとあとは泥のように眠った。





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羞恥プレイ的過去作品享一×泰司シリーズあります。
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