三十分程、と言ったが結局仕事が片付くのに小一時間掛かってしまった。もう帰ってしまっただろうか、などと思いながら階下の喫茶店を覗くと、そこには店のスポーツ新聞を読みながら座っている直登の姿があった。
遠目でも分かる、俯き加減で新聞に目を遣る直登のすっと通った鼻梁が美しい。要は思わず目を瞬かせた。
「お待たせ。悪かったな。思ったよりなかなか片付かなかったよ」
とっかかりに言い訳なんかをしながら前に立つと、 直登は要の声にぱっと顔を上げ、嬉しそうににぱ、と微笑んでみせた。
「あ、お疲れ様ー。さ、せんせ、飯食いにいこうよ」
オフィス街にある、要の会社からは少し離れた、チェーン展開している居酒屋に入ることにした。直登はまだ十八のはずだが、今春高校を卒業しているだろうし、居酒屋でももう大丈夫だろう。もとよりその体つきや雰囲気から到底未成年には見えないから店員からとがめられる心配はない。
「久々の再会に、かんぱーい!」
カウンター席に座り、とりあえず頼んだ生ビールのジョッキをがちりと合わせて直登が言う。
「ぷは~、美味い」
本当に美味しそうにビールを飲む直登を見て要は微笑んだ。
「未成年でビールが美味いなんて、オヤジ入ってるよな。俺が十八、九の頃は、まだビールの美味さが分からなかったよ。チューハイとか、コークハイとか飲んでたのに」
直登が、横に座る要の方を向き口元を拭いながら笑う。その笑顔に要の胸が再びどきりと踊る。
「で、今日は突然どうしたの? 直登が高二になる前の春休み以来だから、二年ちょっと振りかな?」
「あ、うん」
直登は、続きを話す前にカウンターの向こうにいる店員にビールのおかわりを注文した。早い。もうジョッキが空になっている。
「せんせ、俺先生と同じK大学に受かったんだよ。大学の就職課で先生の勤務先が判ったから、知らせに来てみた」
ジョッキを口に当てていた要は、動きをいったん止めた。
「え? ほんとか! おめでとう。まあ、お前、成績良かったからなぁ。じゃ、これからは大学生活を十分楽しめよ」
要は心底嬉しそうに笑って言った。
「合格が決まって、バイト始めたんだ。引越し屋の。それで、今日、初めての給料日」
「おお、そっか。んで、今日は俺に奢ってくれるつもりで来たって?」
「うん、いーよ。もちろんそのつもり」
嬉しそうに目を細めて直登が頷く。
「馬鹿、冗談だよ。俺ももう社会人二年目だし、会社ではまだ下っ端だけど、お前に奢ってやることぐらいできるって。こんな店で悪ぃけど」
要は慌てて言い直した。
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「お待たせ。悪かったな。思ったよりなかなか片付かなかったよ」
とっかかりに言い訳なんかをしながら前に立つと、 直登は要の声にぱっと顔を上げ、嬉しそうににぱ、と微笑んでみせた。
「あ、お疲れ様ー。さ、せんせ、飯食いにいこうよ」
オフィス街にある、要の会社からは少し離れた、チェーン展開している居酒屋に入ることにした。直登はまだ十八のはずだが、今春高校を卒業しているだろうし、居酒屋でももう大丈夫だろう。もとよりその体つきや雰囲気から到底未成年には見えないから店員からとがめられる心配はない。
「久々の再会に、かんぱーい!」
カウンター席に座り、とりあえず頼んだ生ビールのジョッキをがちりと合わせて直登が言う。
「ぷは~、美味い」
本当に美味しそうにビールを飲む直登を見て要は微笑んだ。
「未成年でビールが美味いなんて、オヤジ入ってるよな。俺が十八、九の頃は、まだビールの美味さが分からなかったよ。チューハイとか、コークハイとか飲んでたのに」
直登が、横に座る要の方を向き口元を拭いながら笑う。その笑顔に要の胸が再びどきりと踊る。
「で、今日は突然どうしたの? 直登が高二になる前の春休み以来だから、二年ちょっと振りかな?」
「あ、うん」
直登は、続きを話す前にカウンターの向こうにいる店員にビールのおかわりを注文した。早い。もうジョッキが空になっている。
「せんせ、俺先生と同じK大学に受かったんだよ。大学の就職課で先生の勤務先が判ったから、知らせに来てみた」
ジョッキを口に当てていた要は、動きをいったん止めた。
「え? ほんとか! おめでとう。まあ、お前、成績良かったからなぁ。じゃ、これからは大学生活を十分楽しめよ」
要は心底嬉しそうに笑って言った。
「合格が決まって、バイト始めたんだ。引越し屋の。それで、今日、初めての給料日」
「おお、そっか。んで、今日は俺に奢ってくれるつもりで来たって?」
「うん、いーよ。もちろんそのつもり」
嬉しそうに目を細めて直登が頷く。
「馬鹿、冗談だよ。俺ももう社会人二年目だし、会社ではまだ下っ端だけど、お前に奢ってやることぐらいできるって。こんな店で悪ぃけど」
要は慌てて言い直した。
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コメント
過去の生徒が訪ねてきてくれる・・・というのは、なーんて嬉しい出来事なのでしょう。
教師っていう仕事は、生徒にとっては通過点だからさ・・・
教師っていう仕事は、生徒にとっては通過点だからさ・・・
2007/11/07(水) 14:44 | URL | 平和堂書店 #-[ 編集]
つい先日私も15年ぶりくらいに
先生に電話してみたところです
「まだ続けてくれてたなんて嬉しい」
と喜んでもらえました。
私もとある先生のハシクレですが
何年か後に連絡くれる教え子…ないだろなぁ…wwwww
先生に電話してみたところです
「まだ続けてくれてたなんて嬉しい」
と喜んでもらえました。
私もとある先生のハシクレですが
何年か後に連絡くれる教え子…ないだろなぁ…wwwww
あ・・・ベラさんとの共通点めっけ^0^
2007/11/07(水) 22:06 | URL | 平和堂書店 #-[ 編集]
あ、平和堂サンは先生なんですね!
ややや絶対平和堂サンの方が
偉大な先生ですから!
間 違 い な しwwwww
ややや絶対平和堂サンの方が
偉大な先生ですから!
間 違 い な しwwwww
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