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これで、卒業。

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 やっとの思いで卒論を書き終えほっとしたのも束の間、次こそが最後の難関、卒論諮問。太一の選択していたゼミは質問内容の厳しさが有名で、諮問中答えに窮した学生が貧血を起こして倒れた、という逸話もあるくらいだ。春休みに入ったといってもまだ寒い大学の廊下を、太一は緊張した面持ちで諮問の待合室となっている教室に向かって歩いていた。

「……あ、木戸」

 教室に入ってすぐ視界の真正面に捉えたのは今春一緒に卒業する木戸滉士(きど こうし)の姿。座って資料に目を落としていた木戸が太一の気配に端整なその顔を上げた。

 ――あと何回コイツの顔、見ることが出来るんやろ。ほんで卒業してしもたら――



 立ち竦んで少し考える。同じ学部で同じゼミ。何かと理由をつけては時を共に過ごし、授業の少なくなった四年生のこの一年でも週に三度は顔を合わせる程だった。

 四月になると大手商社に就職が決まっている木戸は本社のある東京へ行ってしまう。地元京都の法律事務所に就職を決めた太一とは繋がりを保つのですら難しくなりそうな状況になる。

 一緒にいるだけで楽しかった。二人の就職が決まり、春から一緒にいられなくなる、その事実を突きつけられて初めて気付いた自分の気持ち。

 太一は、木戸に恋していた。

「今日の諮問、お前で最後やんな?」

 木戸にそう問われ、慌てて木戸の隣に腰をおろす。

「そうやけど?」

 太一は問い掛けた木戸を見つめ返した。

 ――何かいつもと様子が……。

 いつもの自信と余裕に満ちた木戸とはどこか違う。表情は僅かに強張り、その自信に影を落としていた。

「……木戸、ひょっとしてお前、緊張してるとか?」

 恐る恐る訊いてみる。

「ん? まぁな。諮問で緊張してんのとちゃうけど」
「え? じゃあ何に緊張してんねん?」
「……諮問終ったら、好きな奴に告ろうかと思てな」

 一瞬の沈黙。部屋の温度が一気に下がった気がした。

 ――好きな奴に告ろうかと思てな。

 太一の中で何度も木戸の言葉が繰り返される。胸の奥には鈍痛。太一は掌を胸に宛てた。

 ――そんなん、当たり前やんな。木戸にかて好きな奴くらいいるやろ……。
 むしろオトコマエで何でもできるあの木戸が、今まで俺と一緒にいてばっかりやった、てのが不自然やったんや。

 逡巡して、太一は精一杯の笑みを浮かべた。

「……へぇ……。そう、なんや。お前やったら上手いこと行くんちゃう? ……頑張ってな」

 ぎこちない太一の笑みを見て木戸が小さく笑う。

「……どうかな。まぁ、祈ってて」

 丁度その時教室の扉が開き、諮問を終えたばかりの生徒が消耗しきった表情で木戸の番を告げた。手にしていた資料をまとめて木戸が立ち上がる。

「……じゃな」
「おう、頑張れよ」

 諮問を前に資料にも目を通さず、先刻までの諮問に挑む気合いも忘れてしまった。一人取り残された教室で太一はただ呆然と座っているしかできなかった。

「太一、お前の番」
「あ、ああ……」

 いつの間にか諮問を終え、戻ってきた木戸に掛けられた声でやっとの事で我に返り、太一は立ち上がった。「頑張れよ」と励ます木戸の声にも返事をする事もできないまま、太一はフラフラと諮問会場である隣室へと向かった。

 諮問は散々だった。……というより呆然としたまま始まり呆然としたまま終わり、何時の間にか室外に放り出されていた、という感じか。

それでも今気になる事は、諮問の事よりも木戸の事だった。

 ――告る相手って誰なんやろ……

 不意に込み上げてくる胸のモヤモヤ――嫉妬か。

「俺のアホ……。木戸が誰と付きおうたって俺はトモダチでいられるやん……」

 太一は大きく溜息を吐き、俯き加減で廊下を歩きだした。

「誰がトモダチやって?」

 聞き慣れた声に驚いて顔を上げる。そこには諮問を終えてとっとと好きな人とやらに告白をしに行っているはずの木戸が腕を組み、壁に凭れて立っていた。

「木戸……。いくら俺が付き合いええゆうたってお前が告りに行くのについて行ったりはしぃひんで」

 太一は不貞た表情で思わず本心を漏らした。当然だ。自分の好きな奴が他の誰かに告白する所を見たい奴なんていないだろう。

 木戸はふと笑って、組んでいた腕を解いた。呼吸を整えるようにゆっくりと息を吐きながら、太一に近づいてくる。

「……アホ。そんなコトお前に頼むか……ったく。俺が四年間全身で『好きやー』って言い続けてきたのに……」
「……なんや、もう振られて来たんかいな」
「ちゃうっちゅうねん」

 にわかに明るくなった太一の声のトーンに苦笑して、木戸は太一の顎に手をかけた。太一はそれに抗うことなく顔を上げ、木戸をじっと見詰め返した。

「だーから。お前や、お前。……俺の好きなんはお前や、太一」
「……え? ……嘘……俺、お前から好きやなんて言われた覚えは一回もないで」
「……ああ。俺もこの四年掛けてお前がどんだけ鈍いか、っつう事を痛い程思い知らされたわ」 

 苦笑に肩を揺らしながら、木戸は太一を抱き寄せた。

「俺、この四年間お前ん事トモダチやと思ったことなんか一回もない。……お前がこの四年間で誰からも告られたりせんかったんは俺が裏から手ぇ回してたからや」
「……マジで……?」
「そやなかったらお前みたいなカワイイ奴が四年間もずっと一人身でいれる訳ないやないか」
「はぁ? カワイイって……お前な……」

 不満げに言葉を返して身じろぐ太一を、木戸はその動きを制するように腕の力を強めた。

「好きやで、太一。……返事は?」

 耳元で囁かれると、四年間で聞き慣れたはずの声に身体の奥を擽られ、頬が熱くなるのを感じる。その熱を逃すように、太一はそっと息を吐いた。

「……そんなん、何でもっと早よ言うてくれへんかったんや……。四月までにあと一ヶ月ちょっとしかあらへんやんけ」
「お前が自分の気持ちに気付いたんって、ごく最近やないか。最近は卒論もあったし、それどころやなかったやろ? それに、太一が俺以外の奴は欲しぃない、って思うようになるには一ヶ月あれば充分や」

 見透かしたような言葉とは裏腹に、良かった、と吐息交じりの小声を漏らしながら何度も木戸が太一のこめかみに唇を押し当ててくる。

「四月になったって週末にはこっち戻ってくるから」
「……ん。絶対やで……?」

 うん、と大きく頷いて身体を離すと木戸は太一の手を取って強引に歩き出した。その背中はいつもの自信に満ち溢れている。

「とりあえず、今日は家に帰らへん、って連絡入れろよ?」

「え? おい、ちょ……!」

 引きずるように手を引かれながら、太一は嬉しさを噛み締めるように唇を噛んだ。



おしまい


いつもの更新分の3倍以上の長さのこの話をお読みいただきありがとうございマスm(_ _)m
読んだことある、と思われた方申し訳ございません。
以前うぷった同タイトルの改訂版すアセアセ
タチウケ二人ともが関西弁のエロを!とリク頂きますたので
まだ書いてなかったこの二人のエチーを書かせていただくことにしますたv
この二人は京都弁(のつもり)すw
明日以降二人のエチーをうぷっていく予定す。よろしければまたお付き合いおながいしますm(_ _)m



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コメント
(;゚∀゚)キタ!!
興奮気味にアチコチに米残しまくりですみません;
でも残さずには居られませんハナですこんばんわ!

明日からエロッ(;´Д`)ハァハァ
たたたったたたたのしみにしてままます(;゚∀゚)=3
2008/06/05(木) 00:34 | URL | ハナ #ZJmJft5I[ 編集]
wwwwwwww
>ハナさん

もーおまいら会って話しろよなクロストーク
今ワテシもハナさんトコに米挿れてきたトコロすwwwww
二人のエロ、途中まで書いてますが色気が出ねぇす(;´Д`)
なんででしょうwwwwww関西弁身近すぎるんでしょかwwwww
先日の関西弁も「も……あかん……」発動できず
今回こそ!!!
ごごごごごご期待に添えますかどうかははははハナハダ不安ですが
お付き合いヨロです((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
2008/06/05(木) 00:38 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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