トモダチ、卒業します。（１）（R15)

「んーそかー。そやな……」
「そんな行きたかったんやったら東京で行こ。お前が東京遊びに来た時にでも」

　太一の不平を軽く往なしながら、木戸は途中寄ったドラッグストアで太一を店の前で待たせて買って来た何かを紙袋から取り出してヘッドボードに置いた。

「ちょ……おまそれ……っ」
「ん？　ああ、コンドーム。……とローション？」

　口をわななかせて指を差す太一に木戸はしれっと答えてその箱を見せた。

「おまっ……よくも恥ずかしげもなくそんなモン……っ」
「え？　……でもあった方がええやろ」

　木戸はそれらの外装フィルムを外し、下準備に余念がない。その慣れた手つきがまた太一を苛立たせる。

「お前、俺が初めてちゃうやろっ？」
「んーまぁそら……えっと高校ん時、とか？」
「うっわその言い方絶対嘘や。俺と出会ぉてからもあるやろ。そういえば俺らそんな話今までした事なかったもんな」
「太一、ちょっと」
「相手は？　オンナ？　ひょっとしてオトコ？　俺は裏から手ぇ回されてたお陰か何か知らんけどずっと何もないままやのに？」

　話しているうちにボルテージが上がって行くのが自分でも分かる。自分で自分を煽ってどうすんねん、と心の底で自制しようとする声も聞こえてはくるけれど、どうしても止められない。

　――なんや俺。……嫉妬？　何に？　木戸だけ経験ありそうなとこにか？　それとも木戸の今までの相手に――？

　極まった感情が押し寄せて、不意に目頭が熱くなる。

「俺の事好きやって、お前さっき言うてたやん。俺の知らんとこでお前は、俺以外の……」
「太一」

　荒々しく目元を拭う太一の腕を木戸が掴み、そのまま太一はベッドに落し倒された。木戸は暴れようとする太一の両手首をベッドに縫い付け、八センチの身長差＋体格差にモノを言わせて身体で太一を押さえ付けた。

「ちょっと、もう黙れって」
「黙れってそらお前は余裕かも知れ……んんっ」

　自力で抑える事ができずに溢れる言葉が、木戸の唇に遮られた。途端、背に快感が走る。唇をこじ開けられ、木戸の舌が入り込んでくる。

「んっ、……はっ、……ん」

　上顎を内側から舐められる。木戸の舌先が擽るように歯列を辿ると、甘い感覚に全身が痺れて、身体中から力が抜けた。




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ホテルに来るまでの経緯。→これで、卒業。


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