「んも~お! 俺が全っ部払うったら払うンだよ! 直登、学生のくせに生意気あんだぉっ。学生は大人しく奢られてたらいいっつーの」
直登は急変した要に驚いたように目を瞬かせて目の前の酔っ払いを見た。
直登は急変した要に驚いたように目を瞬かせて目の前の酔っ払いを見た。
――飲ませたつもりはなかったんだけどな。
直登の飲むペースにつられたのか、要の酒量を超えさせてしまったようだ。
「俺が払います」という直登の申し出は呂律が回らなくなった要にムゲに断られた。
「そう言ってくれるなら」
と直登はあっさり引き下がり、会計伝票を要に託した。
会計を終え、店の外に出たら途端に要がファイティングポーズで身構えた。
「む! 直登、そんな大勢で押しかけたって、駄ぁ目らからな! 一人で充分らっつーの」
そうとうキている要を前に直登は困ったようにワシワシ頭を掻き、んじゃまぁ……、と独りごちて要の肩に手を回した。
「せんせ、俺、一人だよ」
「ん? そか? ならばよし」
満足したように頷くと、要の膝から力が抜け、かくんと折れた。慌てて直登は要の脇の下に自分の腕を回し、要の体重を受け止める。電車はまだある時間帯だが、連れて帰るにはもうタクシーしか手は無さそうだ。大学の便覧で調べた。要の住むマンションはここからならタクシーに乗っても大してかからないはずだ。直登は空いたほうの手を挙げて、タクシーを拾った。
「K町まで」
乗り込んだタクシーの運転手にマンションのある町名を告げる。直登の横で、肩にしっかりと腕を回され座る要は、眠りこけてその小ぶりな頭を直登の肩に預けている。
――なんだよ。家庭教の先生だったときも、さっきの店で酔っ払うまでも、余裕見せてるっぽかったのに、この変わりよう。……可愛すぎる。酒でこんなに可愛くなるんなら、もっと早く飲みに誘うべきだったかな……。
肩口に要の頬の熱を感じて直登はもう片方の手を自分の鼻に押しやった。ぐい、と鼻を拭ってその手を見た。鼻血が出ていない事を確認して、一人苦笑する。
程なくタクシーは要の住むマンションに辿り着いた。
「え…っと確か四○三っと……」
郵便受けを見て、そこに小さく書かれた「吉塚」の名前を確認すると、一階に停まっていたエレベータに乗り込み、四のボタンを押した。
2へ→
「社外恋愛のススメ」シリーズへ→
↓よければポチっと押してクダサイ
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「俺が払います」という直登の申し出は呂律が回らなくなった要にムゲに断られた。
「そう言ってくれるなら」
と直登はあっさり引き下がり、会計伝票を要に託した。
会計を終え、店の外に出たら途端に要がファイティングポーズで身構えた。
「む! 直登、そんな大勢で押しかけたって、駄ぁ目らからな! 一人で充分らっつーの」
そうとうキている要を前に直登は困ったようにワシワシ頭を掻き、んじゃまぁ……、と独りごちて要の肩に手を回した。
「せんせ、俺、一人だよ」
「ん? そか? ならばよし」
満足したように頷くと、要の膝から力が抜け、かくんと折れた。慌てて直登は要の脇の下に自分の腕を回し、要の体重を受け止める。電車はまだある時間帯だが、連れて帰るにはもうタクシーしか手は無さそうだ。大学の便覧で調べた。要の住むマンションはここからならタクシーに乗っても大してかからないはずだ。直登は空いたほうの手を挙げて、タクシーを拾った。
「K町まで」
乗り込んだタクシーの運転手にマンションのある町名を告げる。直登の横で、肩にしっかりと腕を回され座る要は、眠りこけてその小ぶりな頭を直登の肩に預けている。
――なんだよ。家庭教の先生だったときも、さっきの店で酔っ払うまでも、余裕見せてるっぽかったのに、この変わりよう。……可愛すぎる。酒でこんなに可愛くなるんなら、もっと早く飲みに誘うべきだったかな……。
肩口に要の頬の熱を感じて直登はもう片方の手を自分の鼻に押しやった。ぐい、と鼻を拭ってその手を見た。鼻血が出ていない事を確認して、一人苦笑する。
程なくタクシーは要の住むマンションに辿り着いた。
「え…っと確か四○三っと……」
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