ヨキツキヨ（１）

　遅くなる理由は仕事だったり、飲みだったり。ほぼそのどちらかだ。十一時に電話できなければメールが来る。帰りが遅くなっても一日一度は必ず電話が掛かって来る。電話で話せば電波に乗って『好きやで』の言葉が太一の鼓膜を擽るように。太一の耳に届けられる。

　それでも。

　会えない間の不安は募る。

　木戸の同僚の男。一度会った事のあるその男は太一の目から見て明らかに、木戸狙いだ。

　木戸の住む東京。住んだ事のない太一には、そこはじっとしていれば誰かに根こそぎ何かを持って行かれるんじゃないかと思える程の誘惑渦巻く大都会。

　木戸がそんなモノに流されるような男じゃない事も分かってる。

　強く来られれば来られる程、きっと木戸は強くはね返す。

　だから自分は不安なんか感じないで、木戸の言葉を信じていれば良い。

　分かってる。

　会えない寂しさが自分を余計な妄想に駆り立てているだけだって事も。

「延々ループなんは分かってんねんけどなぁ……」

　しっかりせなあかんな俺、と自らを言葉で窘めて、バスタオルを床に放り投げる。ぼふりとベッドに身体を落として、太一は携帯片手に目を閉じた。

　鼻筋の通った木戸の横顔。木戸の『男』を思わせる、関節が美しく浮き上がる指。耳元で囁かれれば太一を溶かしてしまいそうになる甘い声。

　女の子なら勿論、男だってきっと、木戸がその気になればすぐに相手なんか見つかるに違いない。

　――俺に触れるあんなやり方で迫れば。きっと誰だって。

　木戸、今何してる？

　先週末も木戸と会って、勿論セックスもした。今日はまだ水曜日。次会うのは土曜日。遠距離恋愛とは思えない程の頻度で会えている事も分かってる。

「――木戸」

　恋人の名を、そっと声に乗せてみる。それだけで、身体の奥にふと、火が灯る。

　――身体が言う事聞かへんのは、俺の所為とちゃう。

「俺に教えた木戸が悪い……」

　太一はそっと、下着の中に手を入れた。





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↓まとめページつくりまんた。
木戸×太一
（木戸狙いの男は『にしがひがしに』冒頭にちょこっと出てくる当て馬ﾀﾝすｗ）


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まったりとオナヌー的にオナヌーなお話開始すw
こんなアレですがお付き合いいただけるとウレシスです(；´Д｀)

ヨキツキヨ→「にしがひがしに」に続きこれも回文すｖ