夢と現の狭間に

「んー……忘れた」
「忘れた？　嘘だろおいっ、わっ」

　慌てる淳汰をものともしない様子の聡士に、不意に足払いを掛けられた。倒れた淳汰はベッドに落ち、身体がバウンドする。

「これ乗って行くぞ」
「……は？」

　気がつくと、ベッドは上空高く、宙に浮いていた。

「正月だからな」
「はぁ？　マジワケわかんねぇって」

　見渡すとでも、絶景だ。全てのものが、小さく見える。横を見やると、二人を祝福するように、鷹が一羽、ゆったりと飛んでいた。

　富士山の上空まで来たところで、聡士がいつものエロい事を企んでいる目で笑った。

「ほら淳汰」
「ん？」
「コレ」

　見せられたのは茄子だった。どっしりむっちりと熟し、黒く光っている。その茄子を、口元に運ばれた。

「ほら、舐めろよ」
「んっ、……っ」
「ちゃんと舌使えよ」
「んン、……んっ」

　言われて必死にそれを舌で濡らす。

「挿れてやるから」
「んっ、んなの、頼んでねぇ、っ、っん」

　背後から抱き締められたまま、ぬるりと入ってきたのは……茄子？　それがぬるぬると、淳汰の背後を出入りした。

「んっ、ちょ、やっめろって、茄子っ、おいっ、食い物は大切にしろーっ！」
「――淳汰？」
「……あ」

　目を開けると、目に馴染んだ景色。淳汰の部屋だった。背後の違和感は、聡士の熱塊。それで思い出した。行為の最中だった事を。という事は、一瞬落ちてた？　失神したのか俺、と我に返って再び遠くなる。

「何お前、夢見てた？」
「――みてぇ」

　今年の初夢はセックスの、しかも失神中に見た一富士二鷹三ナスビ。愛車はなくなり茄子は突っ込まれた。

　自分史上まれに見る最低かつパーフェクトな吉夢に、淳汰は今年一年がどんな年になるか、ガッツリ占えたような気がした――。



おしまい


『聡士×淳汰（タチ×タチ）』


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