「お前、帰れねんじゃね?」
「んー……」
「俺んち泊まってく? 今日はバイトもねんだろ?」
「うん、……」
野本の住む学生マンションは、二人が通う大学の学生をターゲットにした、歩いて五分程で大学に通える近場にある。今までも急な休講などで時間を持て余した時に、何度か歩も訪れたことがある。
電車も止まり、明日も二限から講義がある。加えて今夜はバイトがない。
晴れていたなら野本の言葉に甘えたかも知れない。
でも今日は。雨が降ってるから。
「もしかして、俺んとこ泊まったら誤解されたり……?」
ふと思い至ったらしい野本が、歩を伺うように覗き込んだ。思いも寄らなかった野本の言葉が少しおかしくて、歩はその視線に応えて一度、ごく小さく噴き出すように笑った。
「んー……」
「俺んち泊まってく? 今日はバイトもねんだろ?」
「うん、……」
野本の住む学生マンションは、二人が通う大学の学生をターゲットにした、歩いて五分程で大学に通える近場にある。今までも急な休講などで時間を持て余した時に、何度か歩も訪れたことがある。
電車も止まり、明日も二限から講義がある。加えて今夜はバイトがない。
晴れていたなら野本の言葉に甘えたかも知れない。
でも今日は。雨が降ってるから。
「もしかして、俺んとこ泊まったら誤解されたり……?」
ふと思い至ったらしい野本が、歩を伺うように覗き込んだ。思いも寄らなかった野本の言葉が少しおかしくて、歩はその視線に応えて一度、ごく小さく噴き出すように笑った。
「ちげーよ。でも……今日は帰るよ」
「だってお前……電車止まってるって。どうやって帰んだよ」
「どうしても電車が無理ならタクシーかな」
また空を見上げて、何でもないことのように答えた。実際何でもないことだと思っていた。
「……、……そか」
野本はまだ少し聞きいことがあったのか、口を開けたり閉めたりを何度か繰り返し、けれども結局何も言わずに頷いた。
野本は歩がいつも多くの時間をアルバイトに費やし、学費もそこから出していることを知っている。だから余計に、タクシーを使ってまで住む家に帰るという、歩のその言葉の意味を知りたいのだろう。
歩はゆったりとした笑みで、野本に視線を向けた。
「野本んち、また晴れた日、行かせてよ。……そん時にでも話すよ」
「おう。近々飲もうぜ」
うん、と笑みのまま頷いて、大学生協で買ったビニール傘を手に、歩はじゃね、と一声残し、野本に背を向けた。
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いつのまにかまた1話増えまんたw
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「どうしても電車が無理ならタクシーかな」
また空を見上げて、何でもないことのように答えた。実際何でもないことだと思っていた。
「……、……そか」
野本はまだ少し聞きいことがあったのか、口を開けたり閉めたりを何度か繰り返し、けれども結局何も言わずに頷いた。
野本は歩がいつも多くの時間をアルバイトに費やし、学費もそこから出していることを知っている。だから余計に、タクシーを使ってまで住む家に帰るという、歩のその言葉の意味を知りたいのだろう。
歩はゆったりとした笑みで、野本に視線を向けた。
「野本んち、また晴れた日、行かせてよ。……そん時にでも話すよ」
「おう。近々飲もうぜ」
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