金曜、夜の繁華街。その人は雑踏の中、遠くを見つめて一人佇んでいた。その人の周りだけ、何も寄せ付けないバリアのような膜が掛かっているかのようだった。
その膜を破るように、坂崎は手を伸ばした。
「陣内さん、……お一人ですか……?」
その人は驚いたような表情の後、上目遣いで笑った。
「……一人だよ?」
その膜を破るように、坂崎は手を伸ばした。
「陣内さん、……お一人ですか……?」
その人は驚いたような表情の後、上目遣いで笑った。
「……一人だよ?」
「誰かと飲んでたんですか?」
決死の覚悟で飲みに誘ったら、陣内はあっさり首を縦に振った。瞬時に脳をフル回転させて、ほんの少しの下心を込めてやってきたホテルのバーカウンター。何を頼むか迷って、坂崎は結局ビールを注文した。
「うん、部署の後輩とね。……あとからその奥さんも加わって。石田セーイチってんだけど……」
分かる? と軽く問いながら、陣内は注文したウィスキーの水割りのグラスを軽く揺する。からん、とその細長い指の中で氷が小さく音を立てる。
いつもどこか一歩引いて、輪の中心を静観しているイメージのある陣内だが、今夜は薄暗い照明の所為か、ここへ来る前何かあったのか、特にその表情に憂いを滲ませているように見える。
「分かりますよ。ヤツとは同期です」
その言葉で陣内が表情を和らげる。
「あ、そうなんだ。じゃあ入社ん時から知ってるんだね」
「入社当時から全然変わんないすよ。褒められても怒られても身体ちっさくさせて。あれで百八五センチあるらしいですからね」
「そんなにあるんだ……。小さくは見えないけど、そんなにあるようには見えないな」
彼に想いを馳せているのか陣内の視線が遠くなる。他愛もない会話。けれども陣内がこんな和らいだ表情を見せるのは、きっと話題の中心が石田だからだろう。そんな陣内に坂崎の腹の底が小さな苛立ちでツキン、と痛む。
「好き……なんですね、石田の事」
思わず核心を突くような言葉が口をついて出た。陣内はほんの一瞬、全ての動きを止め、ぎくしゃくと笑みを浮かべる。
「そりゃ……、セーイチは裏表ないし人当たりもイイし……部署のみんなセーイチの事は好きだよ。みんなが彼の事下の名前で呼ぶくらいだしね、会社なのに」
当り障りのない答えに坂崎の腹の底がまたジリ、と焦(じ)れる。
「や、そういう意味じゃなく……」
はぐらかす陣内を追い詰めるように言葉を返す。陣内は今まで想いを隠し続けて慣れてしまった、悲しい無表情で暫く黙った。
「……誰にも分からないようにやってきたつもりなんだけど……やっぱり分かってしまうモノなのかな」
陣内は自虐的な笑みを浮かべて、焦点の合わない目で手の中のグラスを見つめた。
2へ→
コイゴコロヒトツの続編です。
よければこちらもドゾー
↓よければポチっと押してクダサイ
決死の覚悟で飲みに誘ったら、陣内はあっさり首を縦に振った。瞬時に脳をフル回転させて、ほんの少しの下心を込めてやってきたホテルのバーカウンター。何を頼むか迷って、坂崎は結局ビールを注文した。
「うん、部署の後輩とね。……あとからその奥さんも加わって。石田セーイチってんだけど……」
分かる? と軽く問いながら、陣内は注文したウィスキーの水割りのグラスを軽く揺する。からん、とその細長い指の中で氷が小さく音を立てる。
いつもどこか一歩引いて、輪の中心を静観しているイメージのある陣内だが、今夜は薄暗い照明の所為か、ここへ来る前何かあったのか、特にその表情に憂いを滲ませているように見える。
「分かりますよ。ヤツとは同期です」
その言葉で陣内が表情を和らげる。
「あ、そうなんだ。じゃあ入社ん時から知ってるんだね」
「入社当時から全然変わんないすよ。褒められても怒られても身体ちっさくさせて。あれで百八五センチあるらしいですからね」
「そんなにあるんだ……。小さくは見えないけど、そんなにあるようには見えないな」
彼に想いを馳せているのか陣内の視線が遠くなる。他愛もない会話。けれども陣内がこんな和らいだ表情を見せるのは、きっと話題の中心が石田だからだろう。そんな陣内に坂崎の腹の底が小さな苛立ちでツキン、と痛む。
「好き……なんですね、石田の事」
思わず核心を突くような言葉が口をついて出た。陣内はほんの一瞬、全ての動きを止め、ぎくしゃくと笑みを浮かべる。
「そりゃ……、セーイチは裏表ないし人当たりもイイし……部署のみんなセーイチの事は好きだよ。みんなが彼の事下の名前で呼ぶくらいだしね、会社なのに」
当り障りのない答えに坂崎の腹の底がまたジリ、と焦(じ)れる。
「や、そういう意味じゃなく……」
はぐらかす陣内を追い詰めるように言葉を返す。陣内は今まで想いを隠し続けて慣れてしまった、悲しい無表情で暫く黙った。
「……誰にも分からないようにやってきたつもりなんだけど……やっぱり分かってしまうモノなのかな」
陣内は自虐的な笑みを浮かべて、焦点の合わない目で手の中のグラスを見つめた。
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コイゴコロヒトツの続編です。
よければこちらもドゾー
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コメント
切ない香りぷんぷ・・・・・ん?
んん?延々ERO!?
や、ちょ、気になるし!
延々!やっちゃってください。
延々どころか、永遠に、思う存分。
なんでeroを考えてるときって
やたら凹んすかね…。
いやぁ、それにつけてもエロかぁ…
眠れないなぁ。
まいったなぁ。
楽しくなっちゃうなぁ(´`)
んん?延々ERO!?
や、ちょ、気になるし!
延々!やっちゃってください。
延々どころか、永遠に、思う存分。
なんでeroを考えてるときって
やたら凹んすかね…。
いやぁ、それにつけてもエロかぁ…
眠れないなぁ。
まいったなぁ。
楽しくなっちゃうなぁ(´`)
2007/10/16(火) 23:25 | URL | ハナ #ZJmJft5I[ 編集]
>ハナさん
切なくてぎゅんぎゅんクるのを
書きたいなぁと気分もソレっぽく過ごしてみたりはしてるのですが
所々「ココは笑うトコロか?!あぁ?!」
と自分で自分にガン飛ばしてやりたくなる
ぶっちゃけ良くも悪くもこの明るく軽い性格
なかなか雰囲気が出せず苦戦しとりますwwwww
でもやっぱりコメって糧なんだなぁと痛感
ヨーシパパ頑張っちゃうぞ~
ハナさんの作品全部読破だ!
(ソッチ頑張るんかい)
いつもあ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!です!
切なくてぎゅんぎゅんクるのを
書きたいなぁと気分もソレっぽく過ごしてみたりはしてるのですが
所々「ココは笑うトコロか?!あぁ?!」
と自分で自分にガン飛ばしてやりたくなる
ぶっちゃけ良くも悪くもこの明るく軽い性格
なかなか雰囲気が出せず苦戦しとりますwwwww
でもやっぱりコメって糧なんだなぁと痛感
ヨーシパパ頑張っちゃうぞ~
ハナさんの作品全部読破だ!
(ソッチ頑張るんかい)
いつもあ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!です!
同類は、同じ匂いがするのもですから・・・
2007/11/12(月) 14:12 | URL | 平和堂書店 #-[ 編集]
と言いますねぇ。
日々アンテナ張って生きてますが
現在の私の周囲には腐のニホヒのする人が居ないような……サビシス
日々アンテナ張って生きてますが
現在の私の周囲には腐のニホヒのする人が居ないような……サビシス
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