雨がやんだら（２）

　慎治が働く百貨店の系列ホテルの前に差し掛かる。結婚式があったらしく、雨の中礼服やドレスを着た若者たちが傘を差し、二次会会場への移動を相談しているのか、集まって楽しそうに話している。そうか、今日は土曜日か、などと改めて思う。そう思うと明日も仕事は入ってはいるがこのまままっすぐ帰るのも少しつまらなく思えてきた。

　――誰か呼び出してみるか。

　慎治はスーツの内ポケットから携帯電話を取り出し、アドレス帳を繰った。先日偶然大学時代の後輩が店に来た。また飲もう、と携帯の番号を書いた名刺を渡してみたが、連絡が来ない所をみると一緒にいた男の手前、連絡できないのか、単に連絡する気がないのか。いずれにせよ色々訊きたい事もある。かつては相談にも乗ってやった事だし、飲めば……まぁあわよくば食えるかも、などと淡い期待を胸に、かつて聞いた携帯番号を呼び出して通話ボタンを押してみる。

『……はい？』

　慎治の番号は登録されていないのか、相手の不審そうな声が返ってきた。

「あ、吉塚？　巽だけど。お前大学ん時から携帯番号変わってねぇのな。繋がって良かった」

『あ、巽先輩？　すいません、先輩の携帯番号、その……なくしちゃって……』

「やっぱそか。今何してんの？　一人ならちょっと飲まね？」

『や、今……』

「あ、彼氏来てんだ？」

『ええまぁ……今晩飯買いに……行ってくれてます』

「へ～～、ほ～～～。イイ時電話したなぁ。こないだ一緒にいた奴？」

『……そうっす』

「へ～、良かったな吉塚ぁ～。……んでもまぁ、また何かあったらいつでも電話してよ。相談乗っから」

『あーはい、そっすね、ありがとうございます』

「今の俺の番号、ちゃんと登録しとけよ？　……ところで吉塚さ、なんで一緒に飯買い行かねぇの？」

『え……まぁソレはその……』

「立てねんだろ？　イイな～今日土曜だもんな～」

『……も～先輩勘弁して下さいよも～』

「あぁゴメンゴメン。でもマジ良かったよな」

『はい。……その節は……お世話になって……』

「いーって事よ。吉塚ならいつでもまたお世話してやるから」

『またまた……あ、帰って来たみたいなんで』

「おう、じゃな」

　――そかそか。あの危なっかしいのも落ち着いたんだな。良かった良かった。ひょっとして、アイツらくっつけたの、俺みたいなモンじゃね？

　あながち間違ってもいない予想をしながら、良い話を聞いて満足したように携帯をポケットに戻した。

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慎治の後輩吉塚が気になった方は社外恋愛のススメをお読みくだちぃ(；´Д｀)ですが今回の話には吉塚はあんまりというか全然関係ありませんwwww

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