まあ食えよ、と勧められ、遠慮しすぎず、それでいて貪欲すぎない絶妙なペースで一品を食べ始める。
何品目かに食べただし巻き卵を口にして「あ、これ旨い」とごく小さく呟く。
良いものはごくシンプルに褒め、好くないものには口を閉ざす。
計算づくなようでいて、それをごく自然体でできるところが大敬が周りから慕われ、あるいは可愛がられる所以だ。
大敬自身、自分はいわゆる『空気』を読むのが上手い方だと思ってもいた。
何品目かに食べただし巻き卵を口にして「あ、これ旨い」とごく小さく呟く。
良いものはごくシンプルに褒め、好くないものには口を閉ざす。
計算づくなようでいて、それをごく自然体でできるところが大敬が周りから慕われ、あるいは可愛がられる所以だ。
大敬自身、自分はいわゆる『空気』を読むのが上手い方だと思ってもいた。
その様子を微笑ましいものでも見るかのような目で見守る山中の視線に、わずかに居心地悪さを感じる。
得体の知れないものにどことなく焦らされているようで、ついビールに手が伸びてしまっていた。
「で、田辺」
山中が、手にしていた箸をすっと机に置いた。その仕種は落語家が上着を脱いだのと同じに見える。要するに、ここからが本題だ。
「はい」
山中を見つめ返したが、焦点を合わせるのにいつもより時間がかかる。ヤベェ酔ってる、と内心で舌打ちしながら、それでも瓶を差し出されるとグラスを干してから酌を受けた。
「仕事じゃいたって調子良さそうなのに、悪ィよな」
「なにがすか」
酔いを悟られまいと、多少憮然と応えた。その様子も全て見越していたかのように、山中は微笑ましそうに笑って、テーブルの端に置かれていた煙草のパッケージに手を伸ばした。
「機嫌。悪ィ自覚、あるだろ?」
「……、……」
山中の言ったことは間違いなかった。
つい一カ月前、大敬は付き合っていると思っていた相手に最後通牒を渡されたばかりだった。
その相手の名は、吉森生。
大敬より三歳年上の同性で、同じ部署で働く同僚だった。
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「機嫌。悪ィ自覚、あるだろ?」
「……、……」
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