誰もがきっと、誰かの。（123）（R18）

　薄い皮膚を隔てた骨に、硬質な歯の感触。甘噛みされるもどかしさに、いっそ痛みを感じたいと願う。

「ぁっ、も、っと……」
「……ん？」
「噛んで……、ぁ……」
「ん……」

　羞恥も忘れて欲望のままを口走ると、貴史は生の息の根を止めてしまいそうな程に艶の乗った視線を生に向けた。

「ぁっ、……っ」

　踝に、力がかけられる。甘い疼きが、次第に痛みへと変わる。そしてそれが、官能の渦に飲み込まれ、快感となって全身を駆け巡る。

　貴史の視線を全身で感じながら。

　生の踝に歯を食い込ませたまま、貴史が再び抽挿を始めた。

「ぁっ、ぁ、ぁ、はっ、あ」

　痛みと快感を同時に与えられることに、こんなにも狂わせられてしまうなんてことは、生自身でさえ知らないことだった。

　相手の全てが欲しいと願うことは、己の全てをその相手に晒し出し、その全てを受け入れられ、愛されたいと願うことに等しいのかも知れない。

　過ぎる快感に堪えきれず、そこから逃れたくて、二度目の吐精を望んでいきり立つ自身に手を伸ばした。

　その手を、貴史に掴まれる。

「ぁっ……、っ」
「生、イきたい？」
「ぁ……ん、っん、ん、ぅん……、っ」

　貴史に揺すぶられながら、眉を寄せて何度も頷き懇願すると、貴史は、目許を綻ばせるように笑んだ。

　高く持ち上げられていた片足が下ろされ、再び両脚を抱えられる。身体を折った貴史に、間近で見下ろされた。

「イく顔、見せて」
「ぁっ、……ぁ、っ」

　悪魔の囁きのような少し意地悪い甘さをもって、吐精が許される。無言で生に後ろだけで達しろと言っているかのように、生の両手が貴史の両手に拘束され、ベッドに縫い付けられた。


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