「服、着られる? 見せたいもの、外なんだ」
「ん……」
一体なんだろう、と思いながら、貴史に手伝われて、用意してあったTシャツとデニムを着る。手を取られて、部屋を出た。
「ん……」
一体なんだろう、と思いながら、貴史に手伝われて、用意してあったTシャツとデニムを着る。手を取られて、部屋を出た。
外は明るかったが、太陽は思ったよりずいぶん低い位置にある。まだ夜の名残を残す空気には少し湿り気があり、それが夏の朝を清々しものにしていた。
随分早朝なのだろう。通勤、通学が減少する土曜日の朝にしても、車の往来はかなりまばらで、行き交う人に至っては誰もない。
だからなのか、貴史は取った生の手を、マンションを出ても離さなかった。
生を慮かってか、歩く速度はゆっくりで、まるで早朝の散歩を愉しんでいるかのようだ。恋人と手を繋いで屋外を歩くなんてことは、生にとっては初めてのことで、それだけで生の胸はドキドキと高鳴った。
手を引かれるままに歩き、川沿いの歩道に入った。
――もしかして、あの池に……?
貴史を見る。生が察した様子に、貴史も笑みで応えた。
「ちょっと、目をつぶって」
「え……?」
池と続く道に入る手前、立ち止まった貴史に瞼を優しく撫でられて、生は目を閉じた。そのまま再び手を引かれ、三週間前と昨日、二度の暗闇の記憶を辿りながら池へ続く道を歩く。
一分も歩いただろうか、貴史が足を止めた。
「目、開けていいよ」
貴史に肩を抱かれ、身体の方向を定められる。ゆっくりと、目を開いた。
「うぁ……」
眼前に広がったのは、池を覆う一面の緑の葉の上に、宝石を散りばめたような白い睡蓮の花々。朝の光を反射して、目映く煌めく。眩しくて、目を細めた。
「睡蓮、咲いたんだ……」
その高貴な美しさに、息を呑む。
「生と一緒に見てぇなって。前言ってただろ? 覚えてる?」
「ん、もちろん。ほんとに、綺麗だね……ありがとう」
覚えていてくれて。
こんな素晴らしい風景を、見せてくれて。
隣にいてくれて。
圧倒的な美しさに身じろぎさえもできずに、ただその光景に見入った。
押し寄せるような感動の波が身体の奥からがこみ上げてくる。不意に目が熱くなるのを感じた。瞬きすると、柔らかな涙が一筋零れた。
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すいませんまた終わりませんですた…orz
随分早朝なのだろう。通勤、通学が減少する土曜日の朝にしても、車の往来はかなりまばらで、行き交う人に至っては誰もない。
だからなのか、貴史は取った生の手を、マンションを出ても離さなかった。
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手を引かれるままに歩き、川沿いの歩道に入った。
――もしかして、あの池に……?
貴史を見る。生が察した様子に、貴史も笑みで応えた。
「ちょっと、目をつぶって」
「え……?」
池と続く道に入る手前、立ち止まった貴史に瞼を優しく撫でられて、生は目を閉じた。そのまま再び手を引かれ、三週間前と昨日、二度の暗闇の記憶を辿りながら池へ続く道を歩く。
一分も歩いただろうか、貴史が足を止めた。
「目、開けていいよ」
貴史に肩を抱かれ、身体の方向を定められる。ゆっくりと、目を開いた。
「うぁ……」
眼前に広がったのは、池を覆う一面の緑の葉の上に、宝石を散りばめたような白い睡蓮の花々。朝の光を反射して、目映く煌めく。眩しくて、目を細めた。
「睡蓮、咲いたんだ……」
その高貴な美しさに、息を呑む。
「生と一緒に見てぇなって。前言ってただろ? 覚えてる?」
「ん、もちろん。ほんとに、綺麗だね……ありがとう」
覚えていてくれて。
こんな素晴らしい風景を、見せてくれて。
隣にいてくれて。
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