「はいこれ」
「あン?」
手を取られ、握り込まされたのは、ごく普通の形をした鍵だった。嫌な予感に眉を寄せ、目線で山中に説明を求めた。
「いつでも好きな時来いよ」
「は? だから何なんすか、コレ」
「この家の鍵に決まってるだろ。出張費、浮かせられっぞ。昨日みてぇに飲み過ぎて終電逃したっつうよな日にも、ここ使えるとなれば便利で安心だろ?」
承認の判子捺すの俺だしな、と山中は職権乱用も甚だしいことをさらりと言ってのけた。
「あン?」
手を取られ、握り込まされたのは、ごく普通の形をした鍵だった。嫌な予感に眉を寄せ、目線で山中に説明を求めた。
「いつでも好きな時来いよ」
「は? だから何なんすか、コレ」
「この家の鍵に決まってるだろ。出張費、浮かせられっぞ。昨日みてぇに飲み過ぎて終電逃したっつうよな日にも、ここ使えるとなれば便利で安心だろ?」
承認の判子捺すの俺だしな、と山中は職権乱用も甚だしいことをさらりと言ってのけた。
確かに出張費は浮かせたい。それが上司のお墨付きなら尚更だ。飲み過ぎに限らず、宿泊費が出ない金曜に残業となった時なども、泊まることができる場所があれば安心もできる。
だがそこには、自腹を切ってでもビジネスホテルにでも泊まった方が良かったと思うべき代償――昨夜とつい今しがたのように、山中に抱かれるような事態――が待っているに違いない。
「……、で、出張費より高い代償求めるんっしょ、俺に」
要らねぇすよそんなの、とベッドの上に鍵を投げた。
「――それに俺、タバコ嫌いなんすよね。この部屋、スゲェタバコの臭い。俺までそのニオイになりそうだし」
昨日と今日、大敬を圧倒した山中の香り。煙草の匂いの混じった、雄の体臭。
きっとそれが大敬を、山中から逃れられなくさせているに違いない。
とにかくもうここへは来ずに済む言い訳をと、なるべく棘を含んだ物言いで山中に言葉を投げかけた。
「そうだなー。じゃ止めるか」
山中から、至極呑気な口調で、思いがけない言葉が返ってきた。
あまりにもの急な展開に、山中の言葉の意味が飲み込めず、大敬は目を瞬かせた。
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「――それに俺、タバコ嫌いなんすよね。この部屋、スゲェタバコの臭い。俺までそのニオイになりそうだし」
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きっとそれが大敬を、山中から逃れられなくさせているに違いない。
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「そうだなー。じゃ止めるか」
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