「まぁそれでも何か気がすまねぇとか、俺に礼がしたいとか、思うなら」
にやり、音が聞こえそうなほどの山中の笑み、再び。女子社員からはニヒルだとかオトナの色気だとか賞賛されているが、大敬にはエロオヤジ風情にしか映らない。
はずなのに。
心臓が、ばくんと大きな音を立てる。
にやり、音が聞こえそうなほどの山中の笑み、再び。女子社員からはニヒルだとかオトナの色気だとか賞賛されているが、大敬にはエロオヤジ風情にしか映らない。
はずなのに。
心臓が、ばくんと大きな音を立てる。
不本意な自らの心音を窘めるように、眉を顰めて胸元を見やる。ついでにその表情のまま、その元凶である山中を睨みつけた。その視線にも、山中からは余裕の笑みが返る。
「思うなら、なんなんすか」
苦し紛れに、問い返してやる。
「また俺んとこに泊まりに来いよ。朝イチ東京入るの大変だろ? 前泊でもいいし、なんならもういっそ土曜から二泊しに来たって構わねぇけど」
素晴らしい提案だろ、とでも言いたげなドヤ顔で、山中が大敬を見る。
「なんすか、ソレ? 行かねーし」
思わず敬語も忘れて突っ込みを入れた。敬語なしは多少マズったか、と山中の反応を横目で伺うと、山中は気を悪くするどころか、大敬のその返しを待っていたかのように、満足そうに笑みを深めた。
「まあ気が向けば、な」
運転中のため、前を向いたままの山中の片手が大敬に伸びてくる。避ける間もなく、その手がぼすりと大敬の頭に乗った。
「やめ、てくださいって」
抵抗は、運転中を考慮して小声で、言葉のみに留めた。
大敬の声が聞こえなかったはずはないと思うが、ほとんど返さなかったに等しい大敬のリアクションに山中は気を良くしたのか、そもそもそんなことは大して気にも留めない性質(たち)なのか、そのまま掻き混ぜるかのような手つきでわしわしと、大敬の頭を撫でた。
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苦し紛れに、問い返してやる。
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「なんすか、ソレ? 行かねーし」
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「まあ気が向けば、な」
運転中のため、前を向いたままの山中の片手が大敬に伸びてくる。避ける間もなく、その手がぼすりと大敬の頭に乗った。
「やめ、てくださいって」
抵抗は、運転中を考慮して小声で、言葉のみに留めた。
大敬の声が聞こえなかったはずはないと思うが、ほとんど返さなかったに等しい大敬のリアクションに山中は気を良くしたのか、そもそもそんなことは大して気にも留めない性質(たち)なのか、そのまま掻き混ぜるかのような手つきでわしわしと、大敬の頭を撫でた。
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