山中が帰ってきたことの安堵より、緊張に足が竦む。動けないまま、山中を凝視した。
逆光ではっきりとは分からなかった山中のいでたちが、大敬に近づいてくるにつれはっきりと見えてきた。
――え?
山中の服装に、ほんの少しひるむ。
黒いスーツに、黒いネクタイ。言わずもがな、山中が今まで行っていたところは、法事か、葬儀だ。
逆光ではっきりとは分からなかった山中のいでたちが、大敬に近づいてくるにつれはっきりと見えてきた。
――え?
山中の服装に、ほんの少しひるむ。
黒いスーツに、黒いネクタイ。言わずもがな、山中が今まで行っていたところは、法事か、葬儀だ。
明るい場所から、薄暗いとも言えるエントランスに入ってきた所為だろう、大敬より遅れて、山中が大敬に気付いた。
物憂げな、少し疲れた表情。
その表情が、大敬を見るなりわずかに驚き、そしてほんの少し、切なく歪んで見えたのは、大敬の思い過ごしだろうか。
山中にもし会ったら、嫌味のひとつも言おうかとも思っていたはずなのに、彼の表情を見た途端、何も言えなくなった。
「あ、連絡もせずすいま……」
「田辺」
大敬を求めるように。
山中の手が伸びてきたと思ったその瞬間、山中に抱きしめられていた。
「ぇ、……」
戸惑いのあまり、抱き返すことも出来ない。ただなすすべもなく、山中に身を任せるしかなかった。
「来てくれたのか。良かった、……」
「山中、さん」
大敬の耳元で、山中が安堵にも似た吐息を落とす。
何かあったのだろうか、それは山中の、この格好と関係があるのだろうか。
気になったが、立ち入った質問だ。到底聞けそうにない。
「ちょっと、一人になりたくねぇなって、思ってたとこだったんだよな……」
「そ、なんですか、って、わ、ちょっ」
体の向きを変えた山中に、ぐい、と腰を掴まれた。
「泊まってくつもりで来たんだろ?」
「ちが、や、違くないすけど……ええと、わっ」
ほんの一瞬感じた、山中の痛そうな表情はやはり気のせいだったのだろうか。
山中はいつもの強引さで、大敬を引きずるように片腕で大敬を抱え込んだまま、エントランスのドアを開けた。
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物憂げな、少し疲れた表情。
その表情が、大敬を見るなりわずかに驚き、そしてほんの少し、切なく歪んで見えたのは、大敬の思い過ごしだろうか。
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「あ、連絡もせずすいま……」
「田辺」
大敬を求めるように。
山中の手が伸びてきたと思ったその瞬間、山中に抱きしめられていた。
「ぇ、……」
戸惑いのあまり、抱き返すことも出来ない。ただなすすべもなく、山中に身を任せるしかなかった。
「来てくれたのか。良かった、……」
「山中、さん」
大敬の耳元で、山中が安堵にも似た吐息を落とす。
何かあったのだろうか、それは山中の、この格好と関係があるのだろうか。
気になったが、立ち入った質問だ。到底聞けそうにない。
「ちょっと、一人になりたくねぇなって、思ってたとこだったんだよな……」
「そ、なんですか、って、わ、ちょっ」
体の向きを変えた山中に、ぐい、と腰を掴まれた。
「泊まってくつもりで来たんだろ?」
「ちが、や、違くないすけど……ええと、わっ」
ほんの一瞬感じた、山中の痛そうな表情はやはり気のせいだったのだろうか。
山中はいつもの強引さで、大敬を引きずるように片腕で大敬を抱え込んだまま、エントランスのドアを開けた。
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