好きすきスキと言わせたい（16）

　ネガティブに行けば、「俺よりもっと榛名さんを欲しがる人が現れれば俺なんてすぐ要らなくなる」

　もっとネガティブに行けば、「この三日間放置されてその間に榛名さんの事を欲しがる人が居たからもう既に俺は用済み」

　――どれだろう。

　考えあぐねて、困ったように榛名をチラ見したが、榛名は黙って怜史の答えを待っているようだった。

「俺……榛名さんの事、一番欲しがってる人になれてる……？」

　恐る恐る訊いた。

「今までこんなに欲しがられた事ない……」

　どこか不貞腐れたような口調で、榛名が口を結んだ。

「じゃあ……俺が榛名さんを欲しがってる限り榛名さんは俺のモノでいてくれんの？　俺の事、好きになってくれんの？」

　問いかける怜史を榛名の黒い瞳が見据えた。その深い黒にも心奪われる。やっぱり瞳の色の所為じゃないんだな……、とぐちゃぐちゃの脳の端っこでぼんやり考える。

「俺、怜史がくれるメール、好きだよ」
「うん……」

　日に何通も送り続けたメール、ウザくなかったんだ、と安堵する。

「怜史に好きだって言ってもらうのも、好き」
「うん……」

　――良かった、てか泣きそう。鳩尾の辺り、何かヘン。

「怜史にしたいって言われるのも……好き」
「んな事言ったら今すぐしたくなっちゃうよ、榛名さん……」

　思わず榛名に手が伸びた。いい？　と訊きながら返事を待たずに抱きしめた。腕にその身体を感じると、ふと、榛名の身体から力が抜けた。

「榛名さん、俺は？　俺の事は？　好き？」

　――好きだと言って欲しい。

　祈るような気持ちで、その腕に力をこめた。




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