24/7(twentyfour-seven)（５）

　その山井が、遠目に泰司を見つけて嬉しそうに笑って手を上げた。

「えーっとごめん、行こうか」
「入沢さん、今日は眠くなさそうすね」
「今は毎日よく寝てるからね」

　笑って肩を竦め、二人は店へ向かった。




　初めて入った創作料理の店は、天然木が打ち付けず並べられただけなんじゃないかと思わせるくらい凹凸のある床で、歩くとゴスゴス音がした。料理はといえば「ナス真っ盛り」といった少々エキセントリックな料理のネーミングには辟易したが、濃過ぎず薄過ぎず雑みのない味に適度に効いたスパイスが泰司の口に合った。

　で。

　泰司の向かいに座る山井は時折眩しそうに泰司を見詰め、仕事の話はもちろん、他愛ない雑談に至るまで、泰司のどんな言葉も聞き逃すまいという勢いで耳を傾けていた。

「少し立ち入った事聞きますけど」
「ん？」

　日本酒の類のキツめの酒を勧められたが、実際そうでもある事もありビール派だから、とやんわり断わり続けた。それでもジョッキ数杯目ともなるとさすがに酔いで頬が紅潮し始めた、その頃合を待っていたかのように山井が問いを向けた。

「入沢さんのお宅、名字二つ掛かってますよね」
「ん、同居人いるから」
「俺お会いした事ないすよね」
「まぁ……平日は仕事だからね。帰りもそんな早くねーし」

　通り掛かった店員が空いた皿を下げるために手を伸ばしてきた、その手に皿を渡してやりながら軽い調子で答える。

「男の人すか？」
「うん、男。大学からの腐れ縁で」
「恋人？」
「ええと……」

　山井を見る。真っ直ぐに泰司を見詰める山井の視線とかち合った。享一との関係について、誰かに訊かれたのは初めてだった。正直に答えて良いんだろうか。戸惑いに視線が泳ぐ。




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羞恥プレイ的過去作品享一×泰司シリーズあります。
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