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主よ、人の望みの喜びよ(14)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 乗った電車は最終だったらしく、最寄り駅の一駅手前が終点だった。気が付くと、歩は改札を抜け駅舎の外に立っていた。バスの最終はとうに出たあとで、昼間は賑やかなこの場所も、今は少ない外灯に照らされた部分だけがぼんやりと、暗闇の中に浮いていた。歩と同じ境遇と思われる数名が、タクシー乗り場へと早足で流れてゆく。その流れに逆らって、歩は家への道を歩き出した。


 暗い夜道を、ただ闇雲に。何かを求めて。何かを振り切って。

 いつの間にか雨が降り出していた。

 髪を濡らした冷たい水が、雫となって顎を伝う。己の叫び声を起爆に体内を吹き飛ばし、全身が粉々になってしまえばいいのに。今なら粉々になった身体は、そのまま揮発してなくなってしまうだろう。そんな衝動の導火線に灯る火を、この雨が静かに消していた。

 家に帰ると、玄関に兄の進が立っていた。帰ってきた歩に安堵の表情を見せたのも束の間、ずぶ濡れのその姿に顔色を変えた。

「歩いて帰ってきたのか? 電話したら迎えに行ってやったのに」

 ――歩きたかったから、いいんだ。

 慌ててタオルを取りに行く兄の背に向かって心の中で答える。

「歩、大丈夫か?」

 戻ってきた兄に手渡されたタオルを無言で受け取りながら、歩は小さく頷いた。早くシャワーを浴びろ、と兄に促され、押し込まれるように風呂場へ入った。浴室は予め兄によって出されていたシャワーの湯で温かく、湯気がもうもうと立ち込めていた。

 頭から熱い湯を浴びると、少しずつ体温が戻ってくる。同時に冷たい雨に凍らされ、その機能を停止していた思考がゆるゆると、少しずつ解けてきた。

 ――俺は。俺のした事は。

 目を閉じると慎治の痛々しい姿がはっきりと網膜に映し出される。慎治を痛め付けたのは、紛れもなく自分だ。感情のままに慎治を犯し、血を流させた。







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コメント
大丈夫か、じゃない!
もおうぅ~!!
「大丈夫か?」
なんて言ってるあなたが悪いのよ、お兄さんっ!!
歩君にこんな思いをさせて、一体どうしてくれるのっ?
やっぱりこの責任は自分の身体で…(いや違う;;)
歩君、このまま諦めちゃうんでしょうか?
早く慎治さんの気持ちに気づいて上げて欲しいです~~
2008/05/18(日) 12:31 | URL | 蛍 #-[ 編集]
白々しいったらありゃしないっ!
>蛍さん!

ホントにもー私も兄に腹立ちます!
何かもっとイイアプローチの仕方をしたいと
色々悩んだんですが
どうしても兄をイイ人にはできずに
しかもなんか白々しいカンジで敢無く失敗orz
兄弟で趣味が似てるから
兄も慎治を好きになってスバラシスな三角関係を!
(しかも兄はウケ)
とかヤケになりそうになってしまいまんたwwwwww
でもそれも面白そうですw
明後日以降若干ムリある(汗)スパートにむけて
話し進めて行きますので
ぜひもう少しのお付き合いよろすくです!
2008/05/19(月) 00:31 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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