夜、普段同じ状況であれば接待と称して一席設けるのがほぼ決まりごとのようになっていたが、その段になった途端、野田が助けを求めるように穂積を見た。実際穂積は野田には接待のような事をさせたくなかったと言う事もあり、次の機会で、と穂積はやんわりと断った。次回穂積が一人で来た際に、接待の席は設けるつもりでいた。
「接待、出なくて済んで助かったよ。どうもああ言う雰囲気は苦手で」
一通りの注文を終え、ビールを結構な勢いで流し込んだ野田が、首を竦めて穂積に淡く笑いかけた。
穂積は野田の雰囲気から、注文するのは酢の物や和え物といったあっさりした料理だろうと勝手な想像をしていたが、意外にもバター炒めや揚げ物系の腹にクるものを注文した事に少し驚き、けれどもそこに野田の男を感じてまた彼を好ましく思った。
「接待は営業の仕事ですから。野田さんはもうホント、設計さえやってもらってれば。それで充分すよ」
冗談口調で本音を返し、穂積もジョッキを呷った。
「俺野田さんと仕事ご一緒できてホント嬉しいと思ってます。これから暫く一緒に出張もあるし、その度こうやって一緒に酒飲めるなら、ほんとに」
「ん、暫く世話になるよ」
よろしく、と手にしたジョッキを軽く傾けて、野田はコツリと穂積のジョッキにその角を当てた。
「俺野田さんの設計好きなんですよ。なんていうかこう……人を思ってるのが伝わる、みたいな」
さり気なく野田への想いを込めて言ってみる。どんなものでも、人の手に掛かったものなら作った人の性質のようなものが出る、穂積はそう信じていた。
「まさか。今回のは環境重視が先方から求められてたからまあまだ分かるけど。橋脚とか柱の補強にそれはないっしょ」
「そうなんすけどね。なんとなく」
穂積が笑うと、思い込みだろ、と野田も笑いながら、少しずつ到着し始めた料理をテーブルに迎え入れ、二人はそれらに箸を伸ばした。
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一通りの注文を終え、ビールを結構な勢いで流し込んだ野田が、首を竦めて穂積に淡く笑いかけた。
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「まさか。今回のは環境重視が先方から求められてたからまあまだ分かるけど。橋脚とか柱の補強にそれはないっしょ」
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