そんな会話で始まった二人だけの打ち上げ。予想以上に会話も弾み、いつしかアルコールはビールから日本酒に移って優に二時間は過ぎた。酔いで目元を朱に染めた野田が、とろんとした目で、何を思ったか穂積に話題を振った。
「穂積はあれだな、さすが営業だね。その容姿でその会話の巧さ……モテるだろ?」
「いや、全然すね。なかなか報われない恋愛ばかりで」
「穂積が? 信じられないな」
屈託ない野田の表情と、自らも結構な量摂取した酒。
ふと、魔が差した。
「――ええ。俺、恋愛対象同性なんで」
「……そうなのか」
少しの間。しまった、と正気に返って野田を見た。
俗っぽい興味にそそられるでも、自意識過剰に身の危険を思い込んで身構えるでもない、穂積のその言葉を、ありのまま受け止めた表情。そしてその目に、翳を見た。
「結構いるものなのかな、その、そういう……」
「ゲイですか」
「ん……そう」
「いるようでいなくて、いないようで実は結構いる、って感じでしょうか。野田さんこそ、モテそうですけど。今までありませんか?」
「何が?」
「同性に、告白されたり」
野田の翳が、深くなった。核心を突いたかと、穂積は虚ろに宙を見る野田の表情を見守った。
「……弟に」
「――え」
「俺は、気付いてやれなくて……」
野田が宙を見ながら肩で呼吸をし始めた。野田のその様子に穂積はマズい、と野田の意識を取り戻すため彼の手首を取った。
「野田さん」
「俺は」
「野田さん、店、出ましょうか。ホテルに戻りましょう」
――実の弟。
核心どころか、地雷を踏んじまったか、と内心舌打ちをして、穂積は野田を抱えるように立ち上がらせた。
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「……弟に」
「――え」
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