ただ、それだけ。（24）

「――優子」

　帰ってきた野田に作り置いていた夕食を温め直し、その準備が整ったところでまた寝室に戻ろうとしたパジャマ姿の妻を、野田が呼び止めた。優子は黙って振り返った。

「ちょっと、話」
「なに」

　優子は軽く首を傾けて、テーブルを挟んで野田の向かいに座った。

「俺……」
「ん」

　ただ真っ直ぐに野田を見詰める優子を見詰め返し、野田は静かに深呼吸した。

「優子の事、一番に考えられなくなってしまっ……た」

　逃げるな、自分にそう言い聞かせて優子をじっと見詰めたが、最後にはいたたまれなくて目を伏せた。

「……そう」
「……ごめん」
「でもそれは、今更……でしょ」
「――え？」

　項垂れていた野田は、驚いて顔を上げた。

「私が一番じゃないのは、最初からじゃない。分かってて結婚したつもりだったんだけど」
「どういう……？」

　優子の言葉の意味を量りかねて、答を求めるように優子を見た。

「いつも歩君の事ばかり気に掛けてるの、最初からそうだったから」
「あ……」
「でも、自覚しちゃったんだ」
「……、……ん」
「しかも、歩君じゃない人相手で」
「優子……」

　何も言葉が出てこない野田を見て、優子はどこか可笑しそうに笑った。

「いいのよ、お互い様だから」
「え？」
「私、子供が欲しかっただけだから……本当は女の子が欲しかったけど、男の子も可愛いね」

　ごく穏やかな表情で優子が微笑みかける。訳が分からないと言った様子の野田に、優子は笑みを深めた。

「子供達が大きくなったら、一緒に住もうと思ってた子がいるの。その子とは――その子は女の子だから。その子との間に子供は望めないから……。予定より少し早くなるけど、そんな訳だから私なら大丈夫」
「優子……」
「私ね、歩君を大事に思ってる進さん好きよ」

　優子が野田の手を取って野田に微笑みかけた。

「……ごめん」
「本当に大丈夫。私こそ、ごめんね」

　ありがとう、と優子は笑った。




←23へ　/　25へ→
←１から読む



にほんブログ村

↑ランキング参加中す。よければポチっと押してクダサイ
書く意欲に繋がってます。





この会話でお分かり頂けるかかなり不安なんすが
優子りんビアン説、本気ですた＼(^o^)／orz＼(^o^)／orz（←複雑な心境）

BLに女不要！といつも思ってるすけど
既婚者を扱ってしまった以上避けられない道……(；´Д｀)