ただ、それだけ。（33）（R18)

「野田さん……」

　吐精の余波を、ぎゅっと目を瞑って堪えていた野田が、精を吐き切ってようやく身体の力を抜いた。まだたった二度、野田の身体の内側からその箇所を押しただけだ。それだけで早くも達してしまった野田に、穂積はほんの一瞬、驚きで目を見開いた。そんな穂積の表情を察した野田が、小さく唇を噛んで穂積から目を逸らせた。

「穂積が……、俺にこんな事教えたんじゃないか……」

　つい先刻野田と抱き合って感じた野田の深い包容力が嘘のような、野田の拗ねたような表情。そして野田の童顔には、こんな台詞の方がしっくり来る。

愛しい。野田の、全てが。

　穂積は自由の利く片腕で力の限り、野田を抱き締めた。

「野田さん……俺にその責任、取らせて下さい……」

　肩口に顔を埋めてそう囁き、野田の中に埋めた指をぐるりと回した。途端に野田の身体がびく、と震え、野田の背後が穂積の指を締め付ける。

「ぁっ、穂積……」

　野田が、泣きそうな程に顔を歪めた。穂積の腕に応えるように、野田も再び腕の力を強めた。

「責任、取ってもらわないと困る……」

　野田は少し横を向いて鼻先で穂積の髪を撫で、そっとこめかみに口付けた。

　野田の吐いた残滓を舐め清めようと穂積が身体を少し浮かせると、野田が不安そうな瞳で穂積を見上げた。穂積は大丈夫、と野田を宥めるように柔らかい笑みとキスを落とし、顔を野田の下肢へと下ろして行った。

　野田の腹に散った精を味わうように、丁寧に舌で舐め取ってゆく。口内に広がる、野田の体液の匂い。飲み下すと野田が全身に染み渡ったように、身体の内側から熱くなってゆく。野田の肌に舌を這わせる度、野田の腹はぴくりと震え、それに呼応するように野田の背後も震えて穂積の指を少しずつ奥へと誘った。




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