「おいツバキっ! 待てっ!」
三垣が店を出てそう叫んだと同時に、村椿を乗せたエレベーターの扉が閉まった。合コン会場はビルの五階。動き出したエレベーターの位置を示すランプが次第に下へと降りてゆく。ちっと舌打ちをして三垣はエレベーター横の階段を駆け下りた。
三垣が店を出てそう叫んだと同時に、村椿を乗せたエレベーターの扉が閉まった。合コン会場はビルの五階。動き出したエレベーターの位置を示すランプが次第に下へと降りてゆく。ちっと舌打ちをして三垣はエレベーター横の階段を駆け下りた。
――俺、何でツバキのこと追いかけてんだ? 「合コンキング」だった、てのは誤解だ、と釈明したいのか? いや何でそれをツバキに釈明しなければならないんだっ? だいたいツバキが店出てった理由が何なのか分からないじゃないか。てんで俺の思い違いだったりするかも知れないのに、何やってんだ、俺?
狭くて急な階段をぐるぐると駆け下りながら、三垣は階段と同じようにぐるぐるとそんな思いを巡らせていた。
「ツバキッ!!」
建物を出て荒い息に肩を揺らしながら村椿の行方を追ってきょろきょろと辺りを見渡す。
「はい」
「え?」
いともあっさり返ってきた返事に拍子抜けしたように声のした背後を振り返る。振り返った視線の先には建物のエントランスを出てすぐ横の壁にもたれて立っている村椿の姿があった。
「なんだ、そこにいたのか」
「だって、三垣部長、待てって言ったじゃないですか」
「まあ言ったけど……」
――逃げ出した奴は普通「待て」と言っても待たないものなんじゃねーの?
そんな疑問もさておいてまずは村椿が逃げ出した理由を問いただそうと三垣は村椿に近づいた。
「ツバキ、なんで急に出てったんだ?」
「それは……」
俯いていた村椿がふと顔を上げ、小さく唇を咬んでまた横を向く。酒で上気した頬はまだ薄桃色のままだ。
無意識のうちに三垣はその頬に吸い込まれるように手を伸ばしていた。
「……部長……?」
――わわっ! 俺、何やってんだ? 手が、手が~っ! ツバキがそんな表情(かお)するからっ!
心とは裏腹に三垣の手は止まらない。やがて村椿の頬に到達してしまった。頬を触れられた村椿は驚きの表情を見せたが、薄桃の頬の色を少し深め三垣の手の上に自らの手を添えたかと思うとうっすらとはにかんだ笑顔になった。
「……三垣部長……」
村椿が同じ目の高さなのに顎を引き気味に上目遣いで三垣を見てくる。
――あ~も~誰かっ! 誰か俺の手を止~め~て~く~れ~っっ!
そんな三垣の願い空しく、手は村椿の頬から離れようとしない。その時三垣の手に添えられた村椿の手にぐっと力が込められ三垣の手を引き寄せた。
何が何だか分からずなすがままにされ、三垣は目を瞬かせる。
村椿はふわ、と包むように三垣の身体を抱き締めた。
「三垣部長……いえ、友冶さん……好きです…。入学してすぐ友冶さんが書いた記事を読んで、そしてその記事を書いた友冶さんを見てからずっと……」
――ツツツツツバキ? 何を言ってるんだ? 酔っ払ってんのか?
村椿の腕の中、混乱の所為か三垣の視界がくるくると回りだす。ただ確かなのは自分を包む村椿の暖かさ。回る視界を見ていたくなくて三垣はぎゅっと目を閉じた。目を閉じてしまうと何だか気まで遠くなりそうだ。
4/4へ→
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三垣君の苦悩の日々
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狭くて急な階段をぐるぐると駆け下りながら、三垣は階段と同じようにぐるぐるとそんな思いを巡らせていた。
「ツバキッ!!」
建物を出て荒い息に肩を揺らしながら村椿の行方を追ってきょろきょろと辺りを見渡す。
「はい」
「え?」
いともあっさり返ってきた返事に拍子抜けしたように声のした背後を振り返る。振り返った視線の先には建物のエントランスを出てすぐ横の壁にもたれて立っている村椿の姿があった。
「なんだ、そこにいたのか」
「だって、三垣部長、待てって言ったじゃないですか」
「まあ言ったけど……」
――逃げ出した奴は普通「待て」と言っても待たないものなんじゃねーの?
そんな疑問もさておいてまずは村椿が逃げ出した理由を問いただそうと三垣は村椿に近づいた。
「ツバキ、なんで急に出てったんだ?」
「それは……」
俯いていた村椿がふと顔を上げ、小さく唇を咬んでまた横を向く。酒で上気した頬はまだ薄桃色のままだ。
無意識のうちに三垣はその頬に吸い込まれるように手を伸ばしていた。
「……部長……?」
――わわっ! 俺、何やってんだ? 手が、手が~っ! ツバキがそんな表情(かお)するからっ!
心とは裏腹に三垣の手は止まらない。やがて村椿の頬に到達してしまった。頬を触れられた村椿は驚きの表情を見せたが、薄桃の頬の色を少し深め三垣の手の上に自らの手を添えたかと思うとうっすらとはにかんだ笑顔になった。
「……三垣部長……」
村椿が同じ目の高さなのに顎を引き気味に上目遣いで三垣を見てくる。
――あ~も~誰かっ! 誰か俺の手を止~め~て~く~れ~っっ!
そんな三垣の願い空しく、手は村椿の頬から離れようとしない。その時三垣の手に添えられた村椿の手にぐっと力が込められ三垣の手を引き寄せた。
何が何だか分からずなすがままにされ、三垣は目を瞬かせる。
村椿はふわ、と包むように三垣の身体を抱き締めた。
「三垣部長……いえ、友冶さん……好きです…。入学してすぐ友冶さんが書いた記事を読んで、そしてその記事を書いた友冶さんを見てからずっと……」
――ツツツツツバキ? 何を言ってるんだ? 酔っ払ってんのか?
村椿の腕の中、混乱の所為か三垣の視界がくるくると回りだす。ただ確かなのは自分を包む村椿の暖かさ。回る視界を見ていたくなくて三垣はぎゅっと目を閉じた。目を閉じてしまうと何だか気まで遠くなりそうだ。
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