夏の夜の夢（３/３）

「俺も花火は高校ん時振りだから、もう十二年……振りになんのかな。オンナいない奴らでツルんで見に行ったんだよな。……懐かしいよ」

　花火はまだ間を置いて時折しか上がらない。その空を見上げながら、慎治さんが呟いた。花火の光が慎治さんを照らすと、慎治さんの横顔が明るく映し出される。俺はその横顔に高校生の慎治さんを想像して目を細めた。

　その頃の慎治さんは誰の事が好きだった？　一緒に花火見に行った仲間の中にいたのかな。それとも、彼女のいる人だったのかな。

　俺が高校生ん時には、もう慎治さんに出逢ってたよ。あれから五年。慎治さんとこうやって肩を並べて一緒に時を過ごす事ができる幸せを身体中で感じて、満たされる想いに胸が痛くなる。

　――慎治さん。

　愛しい横顔。もう絶対、離さない。

　慎治さんは強い。その慎治さんが一番強くなるのも、そしてきっと、一番弱くなるのも、俺が関わった時だ。

　そんな確信が持てる程に俺は、慎治さんに愛されてる。

　慎治さんを早く抱きたくて、居ても立ってもいられなくなった。

　俺は慎治さんの手を、もう一度握った。

「慎治さん、……帰ろ？」
「おま何言って……今からフィナーレじゃねぇかよ」
「うん、分かってる。でも……帰ろうよ」

　握った手に、力を込めて慎治さんをじっと見る。慎治さんはワザとらしく溜め息を一つ零して、それから俺の全てを受け入れる、いつもの笑みを零した。

「……そだな、帰るか」

　空はどんどん明るくなってゆく。その光を背に、俺たちは家に向かって歩き出した。




おしまい



←２へ
←１へ

あゆしんまとめページ↓
歩×慎治（高校生×リーマン）→（大学生×リーマン）


にほんブログ村

↑ランキング参加中す。よければポチっと押してクダサイ
書く意欲に繋がってます。