そしてもう一つ。
坂崎はフロアの出口に視線を馳せた。
坂崎と陣内の想いが互いに通じ合う以前、石田が陣内を連れて、そこから二人でどこかへ行くのを見た。その向こうは、石田が陣内に好きだと伝えるために陣内と石田が共に入った部屋、資料室へと続く廊下。結局石田はフラれたし、陣内に訊いてもその密室で石田と何もなかった、と答える。
けれども。
坂崎はフロアの出口に視線を馳せた。
坂崎と陣内の想いが互いに通じ合う以前、石田が陣内を連れて、そこから二人でどこかへ行くのを見た。その向こうは、石田が陣内に好きだと伝えるために陣内と石田が共に入った部屋、資料室へと続く廊下。結局石田はフラれたし、陣内に訊いてもその密室で石田と何もなかった、と答える。
けれども。
資料室の扉を見る度、言葉にはしがたい気持ちが坂崎の胸を塞いだ。それは多分、嫉妬のようなものなんだと思う。自分のように回りくどい事をせず、陣内に正面切って想いを告げた石田への。正しい手順を踏んだ彼の潔さへの。
とてもじゃないが、自分には真似できないだろう、と坂崎は思う。
――こんな俺を、好きになってくれたなんて。
ふと、不安に駆られた。
陣内に目線を据えて、坂崎は立ち上がった。
「陣内さん」
陣内の横に立ち、声をかけた。陣内は声のする方へゆっくりと顔を上げ、坂崎を見た。
「陣内さん、ちょっと」
「ん、なに?」
陣内は特に身構えた様子もなく、穏やかな表情で首を傾げた。
「ちょっと、来てもらって良いですか」
フロアでは普段、目が合えば挨拶する程度の間柄。煙草を吸わない陣内とは喫煙室で顔を合わせる事もない。見る人が見れば不自然な組み合わせに思われるかもしれない。けれども幸い、フロア内に残る人はまばらで皆なるべく早くの帰宅を目指してか、二人に気付く様子もなく各々の机に向かっていた。
坂崎に促されて立ち上がった陣内にちょっと、と視線を残して背を向けた。坂崎の後を付いて来た陣内と共に、二人はフロアを出た。
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すいませんタイトル変えてみますた。まだなんかしっくりキません。
とてもじゃないが、自分には真似できないだろう、と坂崎は思う。
――こんな俺を、好きになってくれたなんて。
ふと、不安に駆られた。
陣内に目線を据えて、坂崎は立ち上がった。
「陣内さん」
陣内の横に立ち、声をかけた。陣内は声のする方へゆっくりと顔を上げ、坂崎を見た。
「陣内さん、ちょっと」
「ん、なに?」
陣内は特に身構えた様子もなく、穏やかな表情で首を傾げた。
「ちょっと、来てもらって良いですか」
フロアでは普段、目が合えば挨拶する程度の間柄。煙草を吸わない陣内とは喫煙室で顔を合わせる事もない。見る人が見れば不自然な組み合わせに思われるかもしれない。けれども幸い、フロア内に残る人はまばらで皆なるべく早くの帰宅を目指してか、二人に気付く様子もなく各々の机に向かっていた。
坂崎に促されて立ち上がった陣内にちょっと、と視線を残して背を向けた。坂崎の後を付いて来た陣内と共に、二人はフロアを出た。
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