「――にしても」
いつの間にか伸びていた灰を灰皿に落として、河辺はようやく二口目の煙草を吸い込んだ。
「俺ならヤんねぇって分かってて俺呼び出した辺り、お前ん中で何か変わってきてるんじゃねぇ?」
「――え?」
「ナツメお前、俺がお前に決まった相手いたらヤんねぇの、分かってんだろ?」
「……、……」
いつの間にか伸びていた灰を灰皿に落として、河辺はようやく二口目の煙草を吸い込んだ。
「俺ならヤんねぇって分かってて俺呼び出した辺り、お前ん中で何か変わってきてるんじゃねぇ?」
「――え?」
「ナツメお前、俺がお前に決まった相手いたらヤんねぇの、分かってんだろ?」
「……、……」
実のところナツメにも分からなかった。河辺なら抱かれても良いと思ったのか、和大と関係を持ったと知った河辺なら、誘っても乗ってはこないと心のどこかで思っていたのか。
「今日俺を呼び出したお前の選択は正しかったんだろーよ。そして据膳を食わない俺に感謝しろ。――けどいつまでもこんな事やってたらマジでその内痛い目見っぞ」
「そ、かな」
自嘲するように笑って俯くナツメに、河辺は仕方ねーな、と笑った。
「とにかく今日はこれ飲んだら帰れ。送ってやるから」
「……ん」
ナツメは素直に頷いた。
「ありがと」
河辺の車でマンションの前まで送ってもらったナツメが車から下りようとした時、河辺に腕を掴まれた。
「――ナツメ」
その強い力に、けれども驚く事なくナツメは振り向いた。近付く唇。キスの予感に、ナツメは薄く唇を開いた。
「……軽く既成事実作ってやろうかと思ったけど、やっぱやめた。ったく……あんなガキにほだされやがって」
くそ、と小さく舌打ちをして、河辺はナツメを掴む手を離した。
「しても良かったのに」
「俺の理念に反するんだよ」
「なんだよそれ」
「なんでもねーよ。……じゃあな」
「……うん」
ナツメが車を降りると、河辺はすぐ車を走らせた。曲がり角でテイルランプが見えなくなるまで見送って、ナツメは自室の窓を見上げた。
部屋には明かりが灯っていた。
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「今日俺を呼び出したお前の選択は正しかったんだろーよ。そして据膳を食わない俺に感謝しろ。――けどいつまでもこんな事やってたらマジでその内痛い目見っぞ」
「そ、かな」
自嘲するように笑って俯くナツメに、河辺は仕方ねーな、と笑った。
「とにかく今日はこれ飲んだら帰れ。送ってやるから」
「……ん」
ナツメは素直に頷いた。
「ありがと」
河辺の車でマンションの前まで送ってもらったナツメが車から下りようとした時、河辺に腕を掴まれた。
「――ナツメ」
その強い力に、けれども驚く事なくナツメは振り向いた。近付く唇。キスの予感に、ナツメは薄く唇を開いた。
「……軽く既成事実作ってやろうかと思ったけど、やっぱやめた。ったく……あんなガキにほだされやがって」
くそ、と小さく舌打ちをして、河辺はナツメを掴む手を離した。
「しても良かったのに」
「俺の理念に反するんだよ」
「なんだよそれ」
「なんでもねーよ。……じゃあな」
「……うん」
ナツメが車を降りると、河辺はすぐ車を走らせた。曲がり角でテイルランプが見えなくなるまで見送って、ナツメは自室の窓を見上げた。
部屋には明かりが灯っていた。
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