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Fly Me To The Moon(27)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 部屋に着く時刻を少しでも遅らせるかのように。普段はエレベーターを使う三階の自室までの道のりを、ナツメは階段を使ってゆっくりと歩いた。

 自室のドアの前に立ち、携帯を開いて時刻を見る。廊下を照らす蛍光灯の薄い光の下で、眩しい程に光るディスプレイは〇時五二分を告げた。


 ノブに手をかけ、そっと引いてみる。ドアは静かに開いた。中に入るとごく小さく、ピアノの音が聞こえて来た。それは一音。ナツメが音楽室で選んでいたように。静かな部屋に、ボリュームを絞った電子ピアノの音が静かに響く。

 和大が部屋の隅に置かれた電子ピアノの前に立っていた。

「ナツメさん――おかえり」

 ナツメの気配に顔を上げた和大が、ナツメに笑みを向けた。

「まだいたんだ」
「うん。……寒かった?」
「車でここまで送ってきてもらった、から」
「そっか」

 和大は、何も言わない。何も問いただそうとしない。その事が、返ってナツメを混乱させる。それが小さな苛立ちとなって、ナツメは拳を握った。

「――なんで」
「え?」
「なんで何も言わねんだよ。今俺、他のヤツと……っ」
「ナツメさん」

 近付いた和大に、優しく腕を引かれた。

 気付いたら、和大の腕の中だった。

 混乱に暴れ出しそうな心ごと包み込むようなその包容に、身体が震えるのを感じる。

「……良かった」

 和大が安堵したような吐息とともに囁いた。

「俺、帰った方が良いのか、ナツメさんは俺にどうして欲しいのか、迷ってたんだけど」
「――帰ったら良かったんだよ」
「……ん。でも」

 和大が、ナツメの両頬を包んだ。目を合わせたら、和大は笑みを深めた。

「こんなにほっとした顔してくれるなら俺、帰らなくて良かった」
「してねーよ。バカだろ、お前」
「ん、ナツメさん、スゲェ好き」

 込み上げる熱。身体がまた、和大を求め始める。不意に目が熱くなる。涙を零したくなくて、ナツメは瞬きを止めてじっと和大を見た。



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コメント
ワンコ
 何か和大タン見てたら、主人の帰りを待つワンちゃんを思い出してみたり…。
 ふわふわ、ほわほわ系。
 このままナツメさんを包み込んであげてほしい。
2009/01/16(金) 08:25 | URL | 如月久美子 #-[ 編集]
ワンコ=コドモっぽいと思ってましたが
>如月さん(*´∀`)

ナツメの拒絶の言葉や態度を言葉通りに取ってしまわずに
がんがれるのはワンコ故なんでしょかw
ひょっとして若干電波入ってそうな気もしたりラジバンダリwwwww
ふわふわほわほわでも見た目は全然そんな事ない(設定w)
ナツメのセラピードッグとして
なぜか(←ツメ甘い)ナツメが背負ってる痛みみたいのを引き受けて
いけるようなそんな流れにもってイきたいアッ――!(イった)
アッ――!りがとうございますた(;´Д`)ハァハァ

****************************************************

>秘密拍手コメiさん(*´∀`)

和大は10コも下なのにナツメの母にも父にも息子にも(?)恋人にも
ならないといけないよな気がするすw
ご褒美はナツメの存在(できれば笑ってる)これだけで
ナツメを愛せるような無償の(?)愛でナツメをなんとか
落としてイきたアッ――!(;´Д`)ハァハァいと思いますが
あああああんんんんん
ナツメは今までのツケを一度払うことになります
和大(と河辺)にはがんがってもらいたいと思います
うまく立ち回りさせられるか筆力不足に
また吐きそうな日々必須(*´∀`)
M故がんがれます(*´∀`)
でもiさんにハゲ増していただければもっとがんがれます(*´∀`)
私がなんとなくこんな感じの愛~ってぼんやり思いながら
組み立ててるだけの穴ダラケの話に
バスっと答えを導いてくださってほんとiさんスゴス(;´Д`)ハァハァ
今日も(´Д⊂ヽてなりそなコメまりがとんございますた(´Д⊂ヽ(ぁ)

2009/01/16(金) 20:19 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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