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偏愛エレジー(10)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「ナツメちゃん待ち合わせ? ――そう、トオルんはいつ来るの? ――それならちょっと一曲弾きなさいよ。――いいじゃない、一杯ご馳走するからぁ」

 ナツメと呼ばれる青年の声は小さいのか、それとも通りにくいのか、彼と話すマスターのハイテンションな野太い声だけが位織の耳に届く。

 渋々といった苦笑いで、けれどもそれを楽しんでいるような表情で一旦着いた席を立った青年は、店の片隅にひっそりと置かれていたアップライトピアノへ歩み寄り、その前の椅子に腰を下ろした。

 ふわりと鍵盤に彼の両手が乗せられたと同時に、店内が柔らかい音に包まれた。

 流れてきたのは、静かで、少し哀しい旋律のジャズのスタンダードナンバー。彼の紡ぎ出す音に、店にいる全員が惹きつけられたように彼の背中を見つめた。心に染み入るように入ってくる彼のピアノに、位織も呼吸も潜める程に身動きせずその音に聞き入った。

 一瞬の静寂。いつの間にか、演奏が終わっていた。それに気付いた客から順に、拍手が送られる。位織は拍手も忘れて、彼を見ていた。

 一曲弾き終えて立ち上がったナツメに、一人の男が近付いた。さっきまで店内にはなかった顔だから、演奏中に店に入ったのだろう。その男に気付いて、ナツメはふと、目を細めて表情を和らげた。

「あぁんトオルん来るの早過ぎよぉ。ナツメちゃん、うちの専属になりなさいよもう」

 わりーな、と冗談口調でマスターに返しながら、トオルと呼ばれた男がどこか得意げにナツメの手を取り、店を出ようと戸口へと向かう。

「じゃな、尚大」
「おう」

 尚大と位織の横を通り過ぎ際、ナツメが尚大に声を掛けた。その声は柔らかいハスキーボイスで、彼の紡ぐピアノの音と同じように、位織の胸にすっと染み入るように響いた。





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尚大×位織

関連:和大×ナツメ 




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コメント
 位織さんの策士的な雰囲気といい、でもミイラ取りがミイラになりそうな予感といい、何だか萌え萌えで堪りません~。

 でも、切ない雰囲気満々なのに、マスターにどつぼのようにはまってしまいました…!!
2009/04/05(日) 11:55 | URL | 如月久美子 #-[ 編集]
分刻みのスケジュールを組むブラック位織でしw
>如月さん(*´∀`)

ミイラ取りがミイラ!まさにソレすね!
重い付き合いができない、って言ってしまったが故に
カラダだけの関係を保たなければならなくなってしまったwみたいなw
若気の至りすw
尚大、いちびって(←関西弁w)ますが
まだハタチなんでw
位織もナンダカンダで23歳なんでw
……改めて書いてみたらワカッ!って思ってまいましたw
萌え萌えありますでしょかすいませんありがとうございます!!!
R指定までもう少しすw引き続きお付き合いよろすくおながいします!

マスターwwwwwwwwwすんませwwwwwwww
こんなちいさい規模でこんなマスタがいるような
凝った料理も出さない店がw
いつまでも続いたリ常連がたくさんついたり
いつもザワザワ混んでたりは……ないだろなぁw
と思いつつw
相変わらずの雰囲気ブチ壊しなマスターなのでした……
今回描写避けましたが
冬でもノースリシャツ(革製?)から筋肉モッコモコの腕ってのもあるすwwwww
2009/04/05(日) 23:46 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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